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【三重大学の授業紹介 #12】石飛徳樹氏(朝日新聞 映画記者)によるオンライン講義が行われました

1月14日(木)、授業 「メディアと日本」(国際交流センター:栗田聡子准教授)において、朝日新聞社文化くらし報道部の映画記者である石飛徳樹氏によるオンラインでの特別講義が行われました。

「メディアと日本」は、国際交流センターが教養教育に「日本学」として開放している授業です。本来ならば留学生と日本人学生が共に学ぶ「国際共修授業」なのですが、新型コロナウイルスの影響で交換留学生の渡日が叶わず、今期は日本人学生19名だけの授業となりました。

この授業では毎回グループ・ディスカッションの時間を作るだけでなく、オンラインの強みを活かし、実際にメディアの世界で活躍されている専門家の方々の話を聞き、話す機会を設けることで、学生が刺激を受けることができるよう工夫をしています。

石飛氏は、映画記者としてカンヌ国際映画祭等への取材から、映画関係の書籍執筆まで、多岐にわたり活躍されています。近年の書籍には、故樹木希林さんの最後のロングインタビューをまとめた『この世を生き切る醍醐味』(朝日新書)など、日本を代表する名優に関する話題作が含まれます。

特別講義のテーマは、「映画をどう見るか」。『浅田家!』や『鬼滅の刃』について、映画記者ならではの見方や裏話について お話いただいた後、講義は本題の映画 『あん』 (2015) の話題に入りました。

『あん』は、カンヌ国際映画祭等で数々の賞を受賞されている河瀬直美監督による映画で、樹木希林さんがハンセン病を患った主役(徳江)を演じた名作です。本学の学生が欧米の大学に留学した際、現地の大学生に感想を求められることの多い映画でもあります。

学生は、前もって『あん』を鑑賞し、主人公である徳江が語った「この世にあるものは全て言葉を持っている、と私は信じています」という意味、「徳江」を演じる樹木希林さんのシーンの中で、最も心に残っているものについて課題の感想文の中で回答しています。学生らの感想文を読まれた石飛氏は、「映画の深いところまで理解されていることに驚きました。自分が学生の頃に皆さんのように理解できていただろうか、と感銘を受けました。」とおっしゃいました。

映画 あん のワンシーン

『あん』のワンシーン(希林さんの背後の木から出ている蒸気は本物なのですが・・・)

数名の学生が、映画で描かれていたハンセン病とコロナウイルスを結びつけて感想を書いたことについて、「素晴らしい。映画は、観られたときに完成することを表している。優れた映画には、このように普遍性があります」とコメントされました。

そして、「皆さんの感想文を、監督の河瀬直美さんにお送りしたい」と話され、後日、河瀬監督に学生らの感想文を送ってくださいました。

以下は、石飛氏から共有していただいた河瀬監督からのお返事(メール)です。
「ありがとう。じっくり読みます。素晴らしいことだなあと思います。映画は公開して終わりじゃないんだな・・・って。映画は死なない。」

今回の特別講義で、映画が世界観や視野を拡げてくれることも含め、たくさんのことについて学ばせていただきました。
石飛氏、河瀬監督、そして天国の樹木希林さんに、心よりお礼を申し上げます。

授業終わりに石飛氏に感謝をこめて皆で拍手する様子

授業終わりに石飛氏に感謝をこめて皆で拍手

以下は、特別講義に対する感想の一部です。
■私は映画を見るときどうしても解釈に正解を求めてしまう(だからこそセリフが多い、わかりやすい映画ばかり見てしまうのかもしれない)が、自分の読み取り方で解釈しても良いのではないかと考えるようになった。
■「セリフですべてを説明する映画はよくない、言葉に頼りすぎてしまうと意味が一つになってしまい、考えさせる余地がなくなる」と言われていたことにすごく感銘を受けました。いま、美術館の設計という課題をしているのですが、そこでも、さまざまな行動を許容できる空間を作るように指導いただきました。それぞれの人がそれぞれの考えを持ち行動することを前提とした設計によって多くの人に利用しやすい施設が設計可能ということでした。このことと良い映画の特徴が似ていることに気づき、「見られて完成する映画」と「使われて完成する建物」の共通点を見つけた気がします。
■「あん」を見た時、私には内容がとても難しくて、内容を理解するという方に意識が向いていました。樹木希林さんの表情や木から蒸気が出ていたことや見逃してしまっていた部分が多くあり、もったいない見方をしてしまったなと思いました。石飛氏や、皆さんの映画の見方を知る事ができたので、もう一度映画を見てみたいなと思いました。


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