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【プレスリリース・研究成果】石礫層を貫くクロマツの根系と微生物の協働 ~海岸林がもつ防災力を高めるための科学~

名古屋大学大学院生命農学研究科の谷川 東子 准教授と環境学研究科の平野 恭弘教授らの研究グループは、信州大学の安江 恒 准教授、三重大学の松田 陽介 教授、福知山公立大学、京都大学、兵庫県立大学、兵庫県森林林業技術センター、森林総合研究所との共同研究により、海岸クロマツ直根の成長速度とそれに関与する要因を明らかにしました。
東日本大震災の津波は、海岸林を破壊し沿岸に暮らす人々に甚大な被害をもたらしました。今後の震災に備え、強くしなやかな海岸林を再生・造成することが求められています。日本の海岸林には、「白砂青松」に象徴されるようにクロマツが広く植えられています。本研究では、クロマツの中には石や礫が密に詰まった深層(石礫層)において直根の伸長が緩やかになる個体と、なおも成長を続ける個体があることを根の年輪解析によって明らかにしました。その石礫層は、一見すると生命が息づく余地のない世界のように見えます。しかしその中で、クロマツの根は自らの皮や細胞を落とし、それを糧とする微生物と共に小さな循環の輪を築いている可能性も示されました。
本研究は、養分に乏しい海岸環境において樹木が深い根を伸ばして定着するメカニズムとして、深根・土壌・菌類の相互作用の重要性を示すとともに、根の成長が旺盛な個体の選抜や石礫層の存在深度を考慮した植栽設計の必要性を明らかにし、海岸林の早期再生に向けた基盤情報を提供します。

本研究成果は、2025年8月28日付Springer Nature雑誌 『Plant and Soil』 に掲載されました。

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