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【三重大学の授業紹介 #33】教育学部における「英米文学概論」

6月29日(木)、教育学部校舎において英語教育コース必修科目であり、教育学部・教科及び教科の指導法に関する科目である「英米文学概論」(担当:金子 淳 教授)の授業に伺いました。

授業の様子①

この授業は、中・高等学校教員養成課程 外国語(英語)コアカリキュラムに則り、「英語で書かれた代表的な文学」「文学作品から見る多様な文化」について、最新のICT活用法を通じて、学んでいきます。加えて、この授業では、大学設置基準における単位の実質化を踏まえ、2単位の授業であることから90時間の学修を確保するために、授業時間外に必要な学修等を考慮して設計されています。具体的には、授業前に自宅や図書館などで課題に取り組んでもらい、授業後は学んだ内容を自宅などでeポートフォリオにまとめる取り組みを行っています(いずれも評価の対象になっています)。

出席の確認は、Microsoft TeamsからMicrosoft Formsを通じて行います。時間になると自動的に、出席していることを確認するフォームが学生のパソコンやタブレットに配信されます(あらかじめ、送信されることがタイマーでセットされています)。そのフォーム上で、学生は「出席している」ことをクリックし、送信します。Zoomには常に繋がった形にしておき、新型コロナウイルスの濃厚接触などにより、授業に対面で出席できない学生が、ハイブリッドで授業に参加できるようにしています。それ以外のZoomの用途としては、急遽、資料を提示する必要が生じた場合、画面共有機能で示し、チャット機能で情報を学生に伝えたりしています。

授業は、シラバスの通りに進められていきます。まず、授業の冒頭で、前回の授業内容を確認します。その後、学生が提出したeポートフォリオ(いわゆる「振り返り」のようなものですが、少し違います。前回の授業内容についてまとめると同時に、自分の考えとその根拠となるエビデンスを引用して論述するレポートという感じです。ルーブリックに基づいて採点され、Microsoft Teamsを通じて返却されます)にコメントをして、その内容をクラス全体にフィードバックして、共有します。次に、今回の授業内容に関する課題が、あらかじめ出されているので、それに取り組んできたことを確認するテストをMicrosoft TeamsからMicrosoft Formsを通じて行います。学生は各自のパソコンやタブレットから、そのフォームに記載された問題を解き、解答を送信します。問題はすべて英語で出題されていて、学生も英語で答えます。結果は瞬時に採点・集計されるので、その場で、テスト結果やクラス全体の解答状況について、金子教授から、解説が行われます。

その後、金子教授があらかじめ収録・編集しておいた授業動画が、Microsoft Teamsから配信されます。その授業動画を、学生はイヤフォンをして、自分のパソコンで視聴して学びます。動画では、シラバスに基づいて、本日学ぶことが全体のなかでどのように位置づけられるか説明した上で、資料を提示しつつ、授業が展開していきます。画面いっぱいに英文の資料が表示され、説明に合わせて、重要な箇所がマウスポインターで指し示されます。地名が出てきた場合、Googleマップに切り替わり、地図上からその地名と場所が示されます。説明が進む中で、授業冒頭で実施されたテスト問題の箇所に差しかかった際、なぜ、その正解に至るのか、考え方などが詳しく解説されていきます。学生は熱心にノートを取ったり、パソコンでメモを取ったりしていきます。授業動画は自分のペースで何度でも、わからないところを繰り返し視聴できるので、自分のペースで学ぶことができます。これは、令和3年に文部科学省から示された、「令和の日本型学校教育」における「個別最適な学び」を意識しています。その間、金子教授は机間指導を行い、質問が出た際、丁寧に答えていきます。例えるなら、通常2人の先生で行うティーム・ティーチングを、1人で行っているようなイメージです。

動画の視聴は授業の前半で終わり、授業の後半では、各グループに分かれて、予習で学んだことや、動画で学んだことをもとに、ディスカッションを行います。こちらは上述の「令和の日本型学校教育」における「協働的な学び」を意識しています。グループのメンバーは、Zoomのブレイクアウト機能を使って、ランダムに数人のグループに分けられます。学んだことについて、自分の考えを述べるだけでなく、他人の考えも聞き、それを踏まえて多角的な視点をもって理解を深めていきます。ディスカッションした内容は、最後に、グループごとにMicrosoft Teamsに投稿して、全員で議論の内容を共有し、金子教授からコメントが加えられます。ディスカッションの内容もまた評価の対象になります。

授業の終わり際に、その日の授業で学んだ内容をどれくらい理解しているか確認するテストを、Microsoft Formsを通じて行います。授業時間終了のチャイムが鳴ると同時に、次回の授業で使う資料(予習してくる範囲)が、Microsoft Teamsから自動的に学生のパソコンやタブレットに配信されます(これも、あらかじめタイマーでセットしてあります)。同時に、本日の学びについて書いて提出するeポートフォリオの記入フォームも配信されます。提出はその日の夜の23時59分までです。

綬魚の様子② じゅごゆの様子③

今回は、1920年代のアメリカ文学、ロストゼネレーションの作家と作品について、アーネスト・ヘミングウェイの『武器よさらば』、スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』を通じて学びました。

金子教授は、学生が動画を視聴している時や、ディスカッションをしている時に、クラス内を巡回し、机間指導を行います。質問が出た学生には個別で指導を行います。どの学生も積極的に質問や発言をしており、授業に対して非常に真摯に取り組む姿が伺えました。

授業の様子④ 授業の様子⑤

本授業では、すべて、Microsoft Teamsを通じて、学生のパソコンやタブレットに資料、問題が配信されるため、もはや黒板、プロジェクター、スクリーン、電子黒板の類は必要なく、使っていません。学生は目の前にあるパソコンやタブレットの画面から学ぶ形になります。席が後ろなので黒板やスクリーンの文字が見えない、ということも生じません(この方法は、予算が限られている学校現場において、一つのロールモデルになるかもしれません)。さらにこの方法でより重要なのは、授業で扱うものは、すべてデジタルデータとして一元化されて管理され、保存されることです。このように蓄積されたデータは、教育データ・教育ビッグデータ、学習履歴(スタディ・ログ)として利活用されます。具体的には、AIやデータサイエンス技術で分析され、得られた新たな知見により、科学的で効果的な学習法を開発、今後の授業と学生指導に役立てていきます。
eポートフォリオは、この授業を通じて、15回分、蓄積されることになりますが、それは後で学生が自分の学びを振り返ることに役立てられます。それらを概観することで、自分の学びの足跡や、展開、成長をあらためて確認することができます。
また、本授業ではICTを用いてテスト、振り返り、課題を行うため、学生は授業に参加することによって、ごく自然にICTの使い方とスキルを身につけることができます。これからの教育において、ICTを活用することは非常に重要になるので、本授業で学んだ学生が、身につけた英語力とICT活用のスキルを活かして、これからの学校教育を牽引していけるような先生になることを期待しています。