みえアカデミックセミナー2023「光がつなぐ食と農」を開催しました
7月19日(水)三重県文化センター1階レセプションルームにおいて、みえアカデミックセミナー2023「光がつなぐ食と農」を開催しました。約80人ものご来場者があり、非常に盛況な講演となりました。
「みえアカデミックセミナー」は、三重県総合文化センターを会場に、三重県にあるすべての大学・短期大学・高等専門学校の高等専門機関が有する高度な学びと県民の皆様をつなぐ一大連携事業として開催されている公開セミナーです。今年度のセミナーは7月15日(土)に始まり、8月27日(日)まで「健康・医療・福祉・歴史・文学・子育て・教育・機械工学」など、各校の特色を活かした様々なテーマで講演が行われます。
三重大学からは、生物資源学研究科生物圏生命科学専攻の橋本篤教授が「光がつなぐ食と農」をテーマに講演を行いました。
食をとりまく現状として、世界においては、感染症の流行により生産する場や人々の動きが停止したことによる食の不足問題、戦争による物流の停止やそれによる物価の上昇問題、日本においては人口減少による食料生産数と食料自給率の低下、高齢化による嗜好の高まりなどがあげられます。それら現状と課題を解決するため、フードサプライチェーンの安定化を図り、食料・食品生産に関わる経済、社会、環境、人々の「持続可能的」な発展が求められています。今回の講演ではその流れの中で、橋本教授が手立ての一つとして取り組んでいる「光による食品の生産・品質管理と加工」の研究についてご紹介いただきました。
食品の生産・品質管理において、膨大な数の生産物を一つ一つ成分分析を行い品質を保つことは非常に困難です。しかし、その生産物による光の吸収パターンを捉え、得られた情報から管理を行うことで多くの生産物の情報を一括で把握し、品質管理につなげることができ、今までかかっていた労力等のコスト削減が可能となります。また、加工においては、宇宙食などを作成する過程で用いられる技術である真空凍結乾燥加工に高周波誘導電加熱を併用することによって、生産プロセスにかかる時間の短縮と殺菌効果を得ることができます。以上のことから食の管理システム、加工システムにおいて光を用いることで、安定した品質のものをより効率的に供給することが可能となることが期待されると話されました。
我々の生活に欠かすことのできない食の分野で、これからの生活様式や世界の流れに対応したフードイノベーションの一例を知ることのできる講演となり、参加者の方々も身近な問題の一つとして真剣に聞き入っている様子が見受けられました。
最後に、橋本教授から今後は調理過程において光を用いる研究を進めていきたいとお話があり、生活の根底にある食の分野が「持続的」に発展していくことを願っていると講演を締めくくられました。