令和7年度第1回三重大学記者発表を開催しました
4月17日(木)、「令和7年度第1回三重大学記者発表」を数理・データサイエンス館にて開催しました。記者発表は、本学の近況や教育・研究・診療など様々な活動を報道機関の方々に紹介するため開催しています。
今回は、以下の事項について発表を行いました。
♦三重大学はアントレプレナーシップ教育を始めます-起業家精神とアントレプレナーの養成による三重モデル地域創生-(発表資料)
三重大学は、「地域共創大学」として、地域社会と本学がともに発展する未来づくりを目指す「三重モデル地域創生」を推進してきました。この一環として、本学および地域にアントレプレナーシップ教育を展開するために「地域創造教育センター」を令和5年に設置しました。
アントレプレナーシップとは、「様々な困難や変化に対し、与えられた環境に適応するだけでなく、自ら枠を超えて行動を起こし、新たな価値を生み出していく精神」のことです。文部科学省は、アントレプレナーシップ教育を「自ら社会課題を見つけ、課題解決に向かってチャレンジしたり、他者との協働により解決策を探求したりすることができる知識・能力・態度を身に付ける教育であり、起業家を育成するためだけのビジネス教育とは異なる」と定義しています。
本学はこの教育の重要性を認識し、これまで展開してきた「地域の企業経営者等を招く授業」や「インターンシップの卒業要件化」などの特徴的な教育の取り組みを発展させ、「アントレプレナーシップ教育プログラム」を新規に開発することとしました。そして、この4月より、本学の学部生にこの新規プログラムの提供を開始しました。
この教育プログラムにより、先行きが予想できない時代を生き抜く力のある人材を育成するとともに、大学発ベンチャー設立を促進したいと考えています。また、アントレプレナーシップ教育を高大接続や地域の教育に活用し、地域創生につなげていこうと考えています。
小林一成 副理事(教育担当)・副学長、
教育推進・学生支援機構 地域創造教育センター アントレプレナーシップ教育部門長からの発表
♦多光子レーザー顕微鏡とクルクミン生体染色を用いた新規生体蛍光観察手法によるヒルシュスプルング病における非侵襲的腸管神経叢のリアルタイム観察~三重大学発!世界初! 組織を透視して無傷で観察~(発表資料)
多光子レーザー顕微鏡は生体組織の深部まで、生きたままリアルタイムに観察する能力に優れているという特徴があります。しかし、その生体の観察は、蛍光染色された組織のみに限られていました。これを克服するため、ヒト組織のような蛍光発色していない組織にクルクミンを散布することで生体の蛍光染色を行い、多光子レーザー顕微鏡と合わせることで、非侵襲的な顕微鏡レベルの組織観察が可能となる新規生体蛍光観察手法(CVS-IFOM)を開発しました。
クルクミンにより生体組織が蛍光染色されるという現象は、溝口明特定教授が発見され特許も複数取得しております。これは三重大学発かつ世界初の新技術であり、術中のリアルタイム組織診断などの臨床応用が期待されます。
今回、腸管の蠕動運動を司る神経が、先天的に欠損しているヒルシュスプルング病の腸管において、新規観察手法であるCVS-IFOMの新技術を用いて、腸を一切傷つけることなく、腸管の神経ネットワークが観察可能であることを実証しました。こちらも世界初の研究成果であり、外科系最高峰の英文誌である「Annals of Surgery」に2024年掲載されました。将来的には、このCVS-IFOMのシステムを術中に用いることができれば、腸管の最適な切除ラインを術中にリアルタイムで観察することで、「どこを切るべきなのか?どこは温存できるのか?」といった重要な判断が手術中に可能となる見込みであり、臨床において多大な貢献ができると考えています。
小池勇樹 医学系研究科,医学部附属病院・講師(左) 、
問山裕二 医学系研究科・教授(中央)、溝口明 医学系研究科・特定教授(右)からの発表
♦令和7年度三重大学運営体制について(発表資料)
三重大学は、令和7年度の新組織体制として、地域の未来を創り、グローバル展開をマネジメントする『国際戦略機構』を新設いたしました 。
新機構の設置に至った背景には、2024年1月時点の、三重県内の総人口に対する外国人住民数の割合は3.2%と、全国の都道府県で第4位であり、県内の外国人労働者数も過去最大となっています 。県内企業の労働力不足が深刻化する中、外国人材の雇用に対する関心が高まっており、外国人労働者を統括する外国人高度人材・リーダーの育成・輩出が喫緊の課題となっています 。
本学は、地域共創大学として、これらの課題や地域からの期待に応え、学内のグローバル化を更に進めるため、これまでの「国際交流センター」を再編して、関連機能を結集し、戦略的な国際マネジメントを行う『国際戦略機構』を学長の直下に新設しました。
新機構では、国際戦略の企画立案機能、国際教育機能、そして海外連携機能を強化し、本学の国際化と地域の人材教育ニーズに応え、地域とともにグローバル人材を育成することを目的としています 。
『国際戦略機構』の新設により、本学の国際化を加速させ、地域社会の発展に貢献できるよう努めてまいりますので、今後とも皆様のご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
伊藤正明 学長(左)、福録恵子 副学長(広報/国際担当)(右)からの発表
♦三重大学医学部附属病院について(発表資料)
三重大学医学部附属病院は、明治9年に三重県医学校兼治療所が設置されことから始まり、昭和19年には三重県立医学専門学校の附属病院となり、昭和47年に国立移管、そして翌年には現在の地、津市江戸橋へと拠点を移しました。昨年には開設80周年という記念すべき節目を迎えています。近年では、平成24年には新入院病棟、平成27年には新外来棟が開院し、地域医療の中核としての役割をさらに強化しています。
当院は、県内唯一の大学病院として、また特定機能病院として、「人間性豊かな優れた医師や医療者の育成」、「最先端の医療の提供や医療技術の開発」、「最後の砦となる重症患者さんに対する医療の提供」の3つの重要な使命を担っております。
さらに、当院は、都道府県がん診療連携拠点病院、小児がん拠点病院、がんゲノム医療拠点病院としての指定を受け、令和4年には総合がん治療センターを設立しました。当センターでは、がん治療のさらなる質の向上のため、複雑化するがん患者さんの併存疾患もきちんと管理し、また、ロボット支援下手術や高精度放射線治療の充実を進めております。
また、本学では医療DXを推進して県民がPHRによる24時間健康把握 やAI受診推奨等を利用できる体制を整え、本学と県内の医療機関・薬局を結んでスマートホスピタル化し、県民の健康寿命延伸を目指します。
令和7年度、新たに附属病院長に就任した佐久間肇率いる新執行部体制のもと、当院は信頼と安心が得られる地域医療の拠点として、未来を拓く診療・研究を推進し、人間性豊かな優れた医療人を育成してまいります。
佐久間肇 医学部附属病院長からの発表