【プレスリリース・研究成果】イルカの糞、垢、母乳の炭素・窒素安定同位体比から食性推定が可能に~イルカに低ストレスな食性推定を目指して~
三重大学大学院生物資源学研究科博士前期課程2年の塚田秋葉さん(筆頭著者)は、同研究科の指導教員である船坂徳子准教授(責任著者)、淀太我准教授、吉岡基教授(現・三重大学理事)、太地町立くじらの博物館の平松春香氏と稲森大樹氏とともに、小型ハクジラ類から低ストレスで採取できる糞、垢、母乳から食性を推定することができるかを調べるとともに、どんな生物をどのくらい食べているかの割合を推定するために必要な濃縮係数を算出するための実験を行いました。
ハンドウイルカのような小型ハクジラ類は、生態系の高次捕食者であり、捕食を通じて様々な生物と関わりを持っています。生物の摂餌生態解明に欠かせない安定同位体比分析ですが、海で生活する大型の哺乳類であるイルカから体組織を得ることは難しく、これまでに明らかとなっている濃縮係数はごくわずかです。糞、垢、母乳は個体に傷をつけず、低ストレスで採取できるという利点がありますが、これまで研究には用いられていませんでした。
研究の結果、ハンドウイルカの糞、垢、母乳の安定同位体比は食性推定に利用可能であることが分かり、実用可能な各試料の濃縮係数も得られました。本研究で算出した濃縮係数をもとに、餌生物の同位体比とイルカの糞、垢や母乳の同位体比を比較することで、どんな生物をどのくらい食べているかの割合を推定することができるようになりました。
この研究成果は2025年2月4日に、日本水産学会誌に掲載されました。