- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

地方大学は「地方」をめざすべきか?「世界」をめざすべきか?
~夢が膨らむ津市と三重大との連携協定~

 先週の2月20日(金)に津市と三重大との連携協定が締結されたのですが、その状況は伊勢新聞さんに写真入りで詳しく説明していただきました。その夕方のNHKの地方ニュースでも報道されたはずなんですけどね。しかし、お気づきにならなかったブログの読者のみなさんも多いと思うので、ここで、ご紹介しておきまますね。

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 平成16年に国立大学が法人化された頃から、三重大は多くの市や町と連携協定を結びました。これは、「地域に根ざし世界に誇れる独自性豊かな」大学つくりを目指す三重大のミッションの最初の「地域に根ざす」ことを実行するためですね。そして、この5年間に三重大は文字通り「地域に根ざす」大学になったと思います。

 でも、最初は「地域」よりも「世界」をめざすべきではないか、という意見がたくさんあったんです。たとえば、“「地域」をめざす大学ではレベルが低く見られる”、“私の研究は基礎的な研究なので、世界のためには役立つかもしれないが地域のために役立たない”、“地域をめざすことにいっしょうけんめいになると、国立大学ではなく、県立大学でよいではないかと国から言われる”とか、いろいろなご意見がありました。

 読者のみなさんはどう思われますか?

 法人化後の三重大は「地域に根ざす」ことを第一に掲げて船出をしたわけですが、2年前(平成19年)起こったできごとは、この方針が正しかったことを私に確信させてくれました。この時は、国の財政制度等審議会が、地方国立大学の予算を半減するという試算を出したんですね。私は緊急に記者会見を開いて、三重大がどれだけ教育や研究に力をそそぎ、地域に貢献しているかを訴えました。この時、津市長の松田直久さんはすぐに東京へ飛んで行かれ、国に陳情してくれたんです。また、三重県知事の野呂昭彦さんも、すぐに行動していただき、全国知事会の反対決議に結びつきました。これは、私にとって一生忘れることができないできごとになりました。

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 このできごとは、私どもに大切なことを教えてくれました。つまり、“地方大学の存続が危機におちいった時に助けてくれるのは、地域のみなさんしかいない”ということです。

 さて、 “地方大学は「地方」をめざすべきか?「世界」をめざすべきか?”という問いに対する答えですが、私の答えは“両方”ということになります。だって、地域の中小企業さんでもグローバル化された世の中で海外に進出しているわけですから、大学が世界に通用する人材を育て、世界に通用する研究シーズを提供しないことには、地域にとって何の役にもたたないんですね。地方大学は地域をめざすべきですが、世界をめざさないことには、地域からも見放されてしまうのです。だから三重大のミッションは「地域に根ざし」のすぐ後に「世界に誇れる」という言葉が続いているんですね。

 さて、津市との連携協定の話は、実は以前からあったのですが、今までのびのびになっていました。三重大は津市にあるので、あまりにも近すぎて、今までも数多くの連携事業をいっしょにやってきて、今さら協定を結んでも、ということもあったと思います。しかし、やはり、正式に組織と組織の間で連携協定を結ぶということは、連携事業がいっそう飛躍する弾みになると思います。そして、私の任期中にこの協定が締結できたことは、本当にうれしく思います。

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 協定書には10もの分野で連携しようという趣旨が書いてありますが、具体的な連携事業の一例をあげると、医療・福祉分野のメカトロ・ロボットセンターを津市と三重大で立ち上げる計画があります。この世界レベルのセンターについては、今までのブログで何回も紹介しましたね。(昨年の9月5日10月2日12月30日12月31日1月17日

 今の世界的な不況の中で大きなダメージを受けている日本は、外需産業から内需産業への転換が求められていますが、医療・福祉・介護という内需中心の分野で役立つメカトロ・ロボットの産業を立ち上げることできれば、この地域にとってほんとうにすばらしいことであると思います。

 津市との連携協定をはずみにして、三重大は地域を再生するためのイノベーションを地域の皆さんとともに生み出す大学として、地域のみなさんといっしょに大きな夢を膨らませていきたいと思います。