卒業式の式辞で伝えるべきメッセージとは?~平成20年度三重大学学位記授与式にて~
3月25日(水)は暖冬のおかげで、桜の花もちらほらと咲きはじめる中での卒業式(学位記授与式)でした。私にとっては、三重大学の学長として最後の式辞を学生たちに送りました。
学長さんたちが集まる会では、式辞の作り方が話題になることがあります。毎年違うお話をされる学長さんもおられるのですが、逆に、人生のあり方をメッセージとして伝えるための式辞で、毎年言うことが違うのはおかしいのではないか、という学長さんもおられます。ただ、同じことを伝える場合でも、伝え方については、毎回変えた方がいいだろう、とそんなふうに話が落ちつきます。
今回の私の学生たちに送ったメッセージは、
“第一点は、「物事の本質をつかむために生涯にわたり勉強を続けよう」、第二点は「イノベーションによって社会を変革するために、問題点を発見する鋭い感性、課題を探求するクリティカルな思考力、組織と人を動かすリーダーシップとマネジメント力、そして異なる立場の人とのコミュニケーション力を養おう」、第三点は「持続可能な世界を実現するために、人と人とが助け合い、共感・共鳴し、信頼し合おう」ということでした。
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私の場合、毎年、よく似たメッセージになっているのではないかと思いますが、今回は、アメリカのサブプライムローン問題がきっかけとなって世界中に広がった未曾有の金融経済危機をとりあげて、このような混沌とした世界の中で生き残るためには何が必要なのかという文脈の中で、3つの心がけの大切さをお話しました。
さて、今までのブログでも何度も書きましたように、式辞でお話したことは、学生たちの記憶から急速に消失してしまうのが現実であると思っています。学生たちの記憶に一生残るような式辞を述べることができる学長さんは、ほんとうにすばらしい学長さんだと思いますが、残念ながら私の場合は、そこまでの能力はありません。
しかし、学生たちに伝えるべき人生のメッセージは、本来、卒業式の土壇場ではなく、在学中にしっかりと伝えておくべきことなのではないでしょうか?大学がふだんから学生たちに指導してもいないことを、卒業式で学長が人生こうするべきであると言っても、ちょっと無責任な感じがしますね。
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実は、三重大は2004年の法人化以来、教育目標に「感じる力」「考える力」「生きる力」「コミュニケーション力」という4つの力を掲げ、そしてそれらを涵養するために「PBL」すなわちproblem-based learningあるいはproject-based learningという構成主義的な教育手法を全学的に根付かせようと努力をしてきました。これは、今回の式辞で、今後の混沌とした世界で学生たちが生き残るために私があげた3つのことを、まさに、学生たちに身につけさせようとするものだったと思います。
卒業生ならびに修了生総代の栗原雅樹さん(生物資源学部)が答辞の中で、三重大での学生生活の中で、4つの力、「感じる力」「考える力」「生きる力」「コミュニケーション力」が身についたことを話されました。学生自身の口からこの4つの教育目標が出てきたということに対して、私はたいへんうれしく感じました。
学長の式辞自体を学生たちが忘却したとしても、学長が式辞で伝えたかったメッセージが、大学の日常の教育の中で学生の頭と体の中にしっかりと根付いておれば、これに勝るものはないのではないか、そんなふうに思っています。
最後に、お忙しい時間を割いて参加していただいた来賓の皆さん、先輩のために一生懸命演じていただいた三重大学管弦楽団、合唱団そして、応援団の皆さん、ありがとう。
“フレー、フレー三重大”、“フレー、フレー卒業生”
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