研究の概要
三重大学大学院生物資源学研究科の関谷信人教授、渡辺晋生教授、教育学部の市川俊輔准教授、ダルエスサラーム大学農業・食品工学部のムチュノ・アルフレッド・ピーター講師の研究グループは、地形によって生み出される土壌微生物群集の変異が有機米の生産性に大きく関与することを発見しました。
研究グループは、京都府与謝野町の加悦谷において、底部と斜面の農家水田を対象に、土壌微生物群集解析、土壌培養試験、現地栽培試験を実施しました。その結果、底部の水田土壌では斜面に比べて、微生物による脱窒やアンモニア利用に関わる遺伝子の存在割合が少なく、有機肥料由来の窒素がより効率的に水稲に利用されていることが明らかになりました。
実際に農家水田で栽培試験を実施したところ、やはり底部の水田が斜面に比べて水稲へ窒素を効率的に供給し、結果的に玄米収量を向上させることが立証されました。これは、有機米を生産する際に地形に起因した土壌微生物群集を考慮する必要性があることを初めて示した研究です。
本研究の成果は2025年7月10日、国際学術雑誌Scientific Reportsにオンライン掲載されました。
論文タイトル:Soil microbes and organic fertilizer efficiency are associated with rice field topography
https://doi.org/10.1038/s41598-025-09111-x
本プレスリリースの本文は「こちら」
研究者情報
生物資源学研究科 教授
関谷 信人(SEKIYA Nobuhito)
専門分野:作物学
現在の研究課題:持続的水稲栽培(有機稲作)技術の開発
生物資源学研究科 教授
渡辺 晋生(WATANABE Kunio)
専門分野:土壌物理学・凍土学
現在の研究課題:
・農地の窒素・炭素循環(養分動態と炭素貯留)
・凍土の利活用
・土の凍結にともなう土中の水・熱・溶質移動
教育学部 理科教育講座 准教授
市川 俊輔(ICHIKAWA Shunsuke)
専門分野:生化学、応用微生物学
現在の研究課題:土壌・腸内・発酵食品・その他環境中で、多様な微生物が共創する重要な機能の解明