グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

隠れた地力の実態を解き明かす 地形が作り出す地力の空間分布が持続可能なコメ作りの鍵に!!

2024.12. 6

研究の概要


三重大学大学院生物資源学研究科の関谷信人教授、渡邊晋生教授、坂井勝准教授の研究グループは、広域水田地帯における地力の分布パターンとその変動要因を明らかにしました。
研究グループは、京都府与謝野町の水田地帯(880ha)から61水田を抽出し、そこから採取した土壌の可給態窒素(土壌が潜在的に植物へ供給できる窒素量≒狭義の地力)を測定して、空間計量経済学の空間ダービンモデルを用いて解析しました。その結果、1)地力が空間的に類似すること(空間的自己相関の存在)を発見、2)水溶性有機炭素や腐植含量が高くなると、その水田自体の可給態窒素が高くなる一方、周辺水田の可給態窒素は低くなること、3)水溶性窒素が水系を介して移動し、周辺水田の可給態窒素に影響を与える可能性を示唆、などが明らかになりました。これまで個別の水田ごとに考えられてきた地力が、実は地形や立地条件に応じて空間的な相互作用を持つことを世界で初めて明らかにしました。
本研究は、これまで見過ごされてきた水田地力の広域的空間分布を科学的に解明し、個別の水田毎に肥料設計(肥料の種類・施用量・施用法を計画すること)を考える従来の方法から水田の立地条件など空間的要因を考慮した肥料設計へと発展させ、持続可能な稲作への新たな指針を示したと言えます。

本研究の成果は2024年11月13日に国際学術誌「Sustainability」に掲載されました。
論文タイトル: Sustainable nitrogen management in rice farming: spatial patterns of nitrogen availability and implications for community-level practices
https://doi.org/10.3390/su16229880

本プレスリリースの本文は「こちら」


研究者情報


 

水稲に秘められた未知の能力を解き明かす (1)_R.jpg

生物資源学研究科 教授
関谷 信人(SEKIYA Nobuhito)
専門分野:作物学
現在の研究課題:持続的水稲栽培(有機稲作)技術の開発

渡辺先生.jpg

生物資源学研究科 教授
渡辺 晋生(WATANABE Kunio)
専門分野:土壌物理学・凍土額
現在の研究課題:農地の窒素・炭素循環(養分動態と炭素貯留)/凍土の利活用/土の凍結にともなう土中の水・熱・溶質移動

坂井先生.jpg

生物資源学研究科 准教授
坂井 勝(SAKAI Masaru)
専門分野:土壌物理学
現在の研究課題:土壌-植物-大気系の水分・熱移動のモニタリングとモデル化/土壌水分と葉温の観測に基づく作物の水ストレス状態の予測