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ジュゴンも水の中であくびをする!

2022.2.28

研究の概要


 三重大学大学院 生物資源学研究科 博士後期課程3年の榎津晨子さんは、同研究科の森阪匡通准教授および吉岡基教授の指導のもと、鳥羽水族館(三重県鳥羽市)と共同研究を行い、飼育下のジュゴンがあくびをすることを確認しました。榎津さんらは、すでにハンドウイルカがあくびをすることを世界で初めて発表しています。今回、それに次いで、完全に水中生活をする哺乳類におけるあくびの2例目の報告となり、あくびが水中でも起こる行動であることを更に裏付けるものとなりました。

 あくびは、私たちヒトを含めセキツイ動物において、主に眠いとき自然に行う行動です。あくびはこれまで「初めに口をゆっくり大きく開けて空気を吸い、次に口の大きさが最大に達し、最後に短く空気を吐き出して口を閉じる」と定義されてきました。しかし、水中で行われるあくびを、ハンドウイルカにおいて発見したことから、必ずしもあくびには呼吸を必要としないのではないかと考えました。そこで、ハンドウイルカの属する鯨類と系統が全く異なるが、水中適応している海牛類に属するジュゴンがあくびをするかどうかに目を付けました。鳥羽水族館でジュゴンを約20時間観察し、ハンドウイルカと同様に「口をゆっくり開け、最大をしばらく維持し、その後急速に閉める」というあくびのような行動を14例発見しました(図)。これらは主にジュゴンが休息している時に起こっていたことから、ジュゴンもあくびをすると結論づけました。
 本研究によって、ハンドウイルカ以外の完全に水中適応した哺乳類もあくびをすることが分かり、あくびは呼吸を伴う必要がない行動であることが支持されました。したがって、あくびの定義から「呼吸」を取り除いた「口をゆっくり開け、口が最大になりそれをしばらく維持し、その後素早く閉じる」とすることへの新たな裏付けの提示になったと考えられます。私たちが普段自然に行っているあくびも、その起源やメカニズム、そして機能に至るまで、まだまだ解明されていないことが多い不思議な行動です。
 
本研究成果は日本の学術雑誌Journal of Ethologyに2021年11月27日にオンライン掲載されました。
Observation of yawn-like behavior in a dugong (Dugong dugon)
https://doi.org/10.1007/s10164-021-00732-z

水中であくびをするジュゴン(鳥羽水族館)

図 水中であくびをするジュゴン(鳥羽水族館)

詳しくはこちらをご覧ください。


研究者情報


   

榎津

物資源学研究科 博士後期課程3年
榎津 晨子(Akiko Enokizu)
専門分野:動物行動学
現在の研究課題:完全に水中適応した哺乳類のあくび,哺乳類におけるあくびの進化

森阪

生物資源学研究科 附属鯨類研究センター 准教授
森阪 匡通(Tadamichi Morisaka)
専門分野:生物音響学・動物行動学・鯨類学
現在の研究課題:鯨類における興味深い行動の記載・鯨類の保全に関わる要素技術の開発・鯨類のコミュニケーションや社会に関する基礎研究


吉岡教授

生物資源学研究科 教授
吉岡 基(Motoi Yoshioka)
専門分野:海生哺乳動物学・繁殖生理学
現在の研究課題:鯨類の繁殖生理機構の解明・伊勢湾に生息するスナメリの生態解明