研究の概要
【背景】
入院患者の低栄養は機能回復遅延や死亡率上昇に関連し、早期スクリーニングと介入が推奨されています。GLIM基準は国際的な低栄養診断の標準化枠組みですが、現場での実装状況や予後予測の有用性の大規模検証は限られていました。2024年6月、DPC制度でGLIM評価の実施が推奨されたことは、実装可能性と予後妥当性を検証する好機となりました。
【研究内容】
本研究は、日本の急性期包括払い制度(DPC)におけるGLIM基準の実装状況と短期予後の関連を、全国約1,700病院の入院成人174,439例(2024年6〜8月入院)を対象に後ろ向きコホートで検証したものです。主要アウトカムは30日・60日死亡で、共変量を調整したCox回帰によりハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定しました。その結果、GLIM基準で低栄養と判定された群は、30日死亡でHR=1.46(95%CI 1.33-1.60)、60日死亡でHR=1.46(95%CI 1.34-1.59)と、非低栄養群に比べて有意に高いリスクを示しました。さらに、評価が「未実施」あるいは「未記録」の患者でも死亡リスクが高く、栄養評価プロセス自体の実装と質がアウトカムに影響しうることが示唆されました。
本研究成果は、2025年9月12日に国際学術誌「Clinical Nutrition」にオンライン掲載されました。
【今後の展望】
栄養ケアの質指標としてGLIM評価の"確実な実施"を位置づけること、政策面ではDPC下でのインセンティブ設計や、多職種連携・情報入力の省力化が鍵となります。
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研究者情報

医学部附属病院リハビリテーション部 助教
清水 昭雄(Shimizu Akio)
専門分野:摂食嚥下リハビリテーション、臨床栄養管理
現在の研究課題:
・データベースを用いた栄養状態とアウトカムの関連性
・3Dフードプリンタを用いた摂食嚥下リハビリテーション介入の提案