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化石巨大ザメ"メガロドン"は考えられていたほど速く泳がなかったが、代謝熱を利用して食欲旺盛だった

2023.7.12

研究の概要


ポイント
■メガロドンにみられる体サイズの巨大化は,必ずしも鱗の巨大化を引き起こさなかったことを発見
■鱗化石の形態から、メガロドンは高速遊泳するサメではなかったことが判明
■メガロドンは代謝熱の大部分を、餌である大きな肉片の消化・吸収に利用していた可能性がある

概要
米国・デポール大学の島田賢舟教授・埼玉県立自然の博物館の山岡勇太学芸員・三重大学教育学部の栗原行人教授・群馬県立自然史博物館の髙桒祐司地学研究係長(学芸員)を含む研究チームは、1986年に埼玉県深谷市(旧川本町)から発見された約1000万年前の1個体に由来するメガロドンの鱗(楯鱗)化石を検討し、メガロドンが部分的内温動物であることを利用して栄養分の消化吸収を促進する,遊泳速度が遅いサメであったことを明らかにしました。

少なくとも体長15mに達したとされるメガロドンですが、楯鱗の大きさは現生のサメ類と大きな差がなく、体サイズの巨大化は必ずしも楯鱗の巨大化を引き起こさなかったことが判明しました。同時に、楯鱗の表面にある小歯状突起の形態を調べたところ、高速で泳ぐサメの楯鱗に特徴的な狭い間隔の小歯状突起が備わっていませんでした。小歯状突起の間隔から推定されたメガロドンのおおまかな遊泳速度は、時速2 km前後と比較的遅いことから、メガロドンは普段ゆっくりと泳ぎ、獲物を捕らえる際に爆発的に泳いだと考えられます。
この発見は、メガロドンの遊泳速度に関する従来の常識を覆すものでしたが、同時に、普段活発に泳がないメガロドンが、部分的内温動物としての高い代謝熱をどのように発散したのかという新たな疑問を生みました。研究チームは新たな仮説として、メガロドンが代謝熱の大部分を使って餌である大きな肉片の消化を促進し、栄養を吸収していた可能性を指摘しました。

本研究成果は、古生物学の国際学術誌Historical Biology誌オンライン版に掲載され、2023年7月12日(水)より期間限定で無料公開されています。
埼玉県立自然の博物館では、メガロドンの楯鱗化石を2023年7月12日(水)から常設展示にて公開しています。

本プレスリリースの本文は「こちら

メガロドンの楯鱗化石

メガロドンの楯鱗化石.右下は0.5mmのシャープペンシルの芯(撮影:島田賢舟教授/デポール大学)


論文名:Tessellated calcified cartilage and placoid scales of the Neogene megatooth shark, Otodus megalodon (Lamniformes: Otodontidae) offer new insights into its biology and the evolution of regional endothermy and gigantism in the otodontid clade (新第三紀の巨大ザメ,オトーダス・メガロドンのモザイク状石灰化軟骨と楯鱗は、その生物学とオトーダス科系統における部分的内温性と巨大化についての新知見を提供する)


研究者情報


   

栗原先生

三重大学教育学部理科教育講座 教授
栗原 行人(KURIHARA Yukito)
専門分野:地質学・古生物学
現在の研究課題:日本列島・東南アジアの新生代層序と貝類化石の分類学的研究

米国・デポール大学 教授
島田 賢舟(SHIMADA Kenshu)

埼玉県立自然の博物館 学芸員
山岡 勇太(YAMAOKA Yuta)

群馬県立自然史博物館 地学研究係長(学芸員)
高桒 祐司(TAKAKUWA Yuji)