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腸内細菌Paraburkholderia sabiaeにより、脳でのタウリン濃度が上昇し、不安行動が軽減される

2023.2.16

研究の概要


 三重大学教育学部理科教育講座の市川俊輔准教授、同大学院地域イノベーション学研究科の臧黎清特任講師、同医学系研究科の島田康人講師(兼 次世代創薬ゼブラフィッシュスクリーニングセンター代表)らは、腸内細菌P. sabiae投与した水槽でゼブラフィッシュを飼育することで、その後の不安行動が軽減されること、この現象に腸内細菌叢やその機能の変化が関わることを明らかにしました。本研究成果はオンライン科学誌『Frontiers in Microbiology』(Frontiers Media SA 社)にて、2023年2月16日に公開されました。

 私たちの腸内には多種の細菌が存在しており、その多様性が崩れた状況(ディスバイオーシス)は、種々の疾患に関わることがわかっています。また、腸と脳は相互に影響を及ぼしていることが知られており、この関係は脳腸相関とよばれています。たとえば、腸内環境に影響を与えるプロバイオティクスとして知られる乳酸菌によって、不安行動が軽減される事例が報告されています。本研究では、昆虫からヒトまで広範囲の動物腸内に存在するが、その機能の解析が進んでいない細菌Paraburkholderiaに着目しました。Paraburkholderia属の細菌P. sabiaeを投与した水槽でゼブラフィッシュを飼育し(細菌投与ゼブラフィッシュ)、その行動や腸内細菌叢を解析することで、新たな脳腸相関メカニズムを明らかにしました。
 細菌投与ゼブラフィッシュでは不安行動が軽減されていました。その腸内細菌由来のゲノムDNAを解析した結果、腸内細菌叢が大きく変化しており、特にタウリン代謝系が活性化を推定しました。そこで細菌投与ゼブラフィッシュの脳内でのタウリンを測定したところ、その濃度が上昇していました。タウリンは神経伝達物質として、人間やゼブラフィッシュのストレス行動を抑制する働きがあると報告されており、本件でも腸脳相関を介して同様の抗不安作用を発揮したと考えられます。

 本研究では、P. sabiaeを与えることでゼブラフィッシュ不安行動軽減が観察されること、この現象は腸内細菌叢の変動や脳内タウリン濃度上昇といった腸脳相関を介したメカニズムによって生じることを世界で初めて明らかにしました。

 詳しくはこちらをご覧ください。


研究者情報


   

三重大学教育学部理科教育講座・次世代創薬ゼブラフィッシュスクリーニングセンター 准教授
市川 俊輔(ICHIKAWA Shunsuke)
専門分野:生化学・応用微生物学
現在の研究課題:微生物培養制御・新規微生物機能探索

三重大学大学院地域イノベーション学研究科・次世代創薬ゼブラフィッシュスクリーニングセンター 特任講師
臧 黎清(Liqing Zang)
専門分野:薬理ゲノミクス・分子生物学・実験動物学・ゲノム生物学・生理学
現在の研究課題:2型糖尿病性腎症モデルゼブラフィッシュの構築および治療標的遺伝子の探索

三重大学大学院医学系研究科・次世代創薬ゼブラフィッシュスクリーニングセンター 講師
島田 康人(SHIMADA Yasuhito)
専門分野:薬理学
現在の研究課題:肥満・癌モデルゼブラフィッシュを用いた創薬研究

集合写真

市川准教授(写真右から3人目)、臧特任講師(写真右から2人目)、島田講師(写真中央)