グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

独自開発したAI技術とリンパ球培養法により、大きく揺らぐ遺伝子発現変動を有するBリンパ球・形質細胞様樹状細胞分岐を発見

2022.11. 8

研究の概要


三重大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学の永春圭規 博士課程学生(現 市立四日市病院)、三重大学医学部附属病院輸血・細胞治療部 大石晃嗣 病院教授(部長)と、名古屋大学大学院医学系研究科システム生物分野の小嶋泰弘 特任講師、島村徹平 教授、分子細胞免疫学の西川博嘉 教授らのグループは、大石らが開発した包括的リンパ球培養法と、小嶋らが開発した深層生成モデルとスプライシング数理モデルの融合により、単細胞レベルのRNA遺伝子発現の網羅的解析(scRNA-seq)から細胞分化の方向性の"ゆらぎ"を定量的に解析する手法を用いて、抗体産生に関わるヒトBリンパ球と、I型インターフェロンを分泌する形質細胞様樹状細胞(pDC)が共通の前駆細胞由来であること、この細胞分岐点で細胞分化の方向性が大きくゆらぐこと、接着分子であるLFA-1がpDC方向への分化(のゆらぎ)に関連すること等を発見しました。さらにゆらぎのメカニズムを解明するため、新学術領域研究「先進ゲノム支援」により、B/pDC前駆細胞領域のオープンクロマチン領域を解析し(ATAC-seq)、B、pDC分化に関連する転写因子のaccessibilityが両方とも高いことを明らかにしました。

血液細胞の分化は、造血幹細胞から骨髄球系およびリンパ球系前駆細胞に分岐し、さらに様々な細胞に段階的に分岐していく(tree-like model)と考えられていましたが、scRNA-seq解析の進歩により、現在では、血液細胞の分化は連続的(continuous)に起きるという考え方が主流となっています。研究グループは、特定の細胞分岐では、外因性あるいは内因性因子の影響を受けて細胞分化の方向性が大きくゆれることを明らかにし、新しい分化モデル(fluctuation-based differentiation model)を提唱しました。

本研究成果は、2022年8月30日に、国際学術誌「Cell Reports」にオンライン掲載されました。

血液細胞の分化モデル
血液細胞の分化モデル
Fluctuation-based modelのイメージ図
Fluctuation-based modelのイメージ図 制作ウチダヒロコ


詳しくはこちらをご覧ください。


研究者情報


   

永春さん

医学系研究科 血液・腫瘍内科学(現 市立四日市病院) 大学院生(現 研究生)
永春 圭規(NAGAHARU Keiki
専門分野:血液学
現在の研究課題:骨髄増殖性腫瘍の分子病態および線維化のメカニズムの解明

大石先生

医学部附属病院 輸血・細胞治療部 部長、准教授(病院教授)
大石 晃嗣(OHISHI Kohshi
専門分野:血液学、輸血学、HIV感染
現在の研究課題:ヒトリンパ球系分化経路および新たな分化制御機構の解明