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iPS創薬により見出されたブロモクリプチンの家族性アルツハイマー病に対する有効性について

2022.7.19

研究の概要


京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の井上治久 教授、三重大学大学院医学系研究科の冨本秀和 特定教授、京都大学医学部附属病院 先端医療研究開発機構(iACT)の坂野晴彦 准教授らは、「プレセニリン1遺伝子変異アルツハイマー病に対するTW-012R(ブロモクリプチン)の安全性と有効性を検討する二重盲検比較試験及び非盲検継続投与試験を行い、ブロモクリプチンの安全性と有効性を評価しました。
2017年に、井上教授らの研究チームは、アルツハイマー病患者さんのiPS細胞を用いて薬剤スクリーニングを行い、パーキンソン症候群(病)の治療薬であるブロモクリプチンにアルツハイマー病の原因タンパクとされるアミロイドβの強力な産生抑制作用があることを見出していました。2020年より開始した本医師主導治験(第1・2相)では、多施設共同で二重盲検試験および非盲検試験を50週間にわたって実施しました。対象はプレセニリン1遺伝子変異を有する家族性アツハイマー病患者8名を実薬(ブロモクリプチン)群5名、プラセボ群3名に分けて、認知機能(SIB-J)、認知症に伴う行動心理症状(NPI)を評価しました。20週までの低用量期では8名全員が評価対象となり、36週までの高用量期では3名が脱落して5名(実薬4名、プラセボ1名)が評価対象となりました。安全性については、実薬群に家族性アルツハイマー病特有の副作用は認めませんでした。有効性に関しては、20週の低用量期でSIB-Jは実薬群5名中1名、プラセボ群3名中2名で増悪しました。また、NPIは実薬群5名中0名 プラセボ群3名中1名で増悪を認めました。治験に参加された患者さんの人数に限りがあるものの、2つの主要評価項目において、実薬群ではプラセボ群に比べて、認知機能及び行動・心理症状の病状進行が抑制される傾向を見出しました。今後、iPS創薬から展開した本治験の結果に基づいて規制当局と協議しながら開発方針を決定していく予定です。

京都大学iPS細胞研究所 プレスリリース


研究者情報


冨本特定教授

三重大学大学院医学系研究科 特定教授
冨本 秀和(TOMIMOTO Hidekazu)
専門分野:脳神経内科
現在の研究課題:アルツハイマー病、脳アミロイド血管症