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非アルコール性脂肪性肝炎のバイオマーカー確立 ―血中フラグメント化サイトケラチン18の新規検出法―

2022.5.31

研究の概要


この度、三重大学大学院医学系研究科の江口暁子特任准教授、岩佐元雄准教授、中川勇人教授らの研究グループは、血中のフラグメント化サイトケラチン18値が、非アルコール性脂肪性肝炎のバイオマーカーになることを明らかにしました。本研究成果は2022年4月29日、アメリカ肝臓学会誌『Hepatology Communications』にオンライン掲載されました。非アルコール性脂肪性肝炎は、日本国内でも患者数が増加しています。脂肪肝の約25%が非アルコール性脂肪性肝炎に進行し、さらに肝硬変へと進行する場合があることから、脂肪肝から非アルコール性脂肪性肝炎への進行を精確に診断する必要があります。そこで、健常者と脂肪肝患者の判定ができる高い診断能を有するバイオマーカーの開発が望まれてきました。本研究では、シスメックス株式会社が開発した新規フラグメント化サイトケラチン18(fCK18)の測定法を用いて、肝生検を施行した非アルコール性脂肪性肝疾患と生活習慣の介入指導を受けた患者の血清fCK18を測定しました。その結果、血中fCK18値は肝逸脱酵素や非アルコール性脂肪性肝炎の診断に用いられているNAFLD activity score(NAS)と相関しました。また、血清fCK18値は健常者と比較して非アルコール性脂肪性肝疾患で顕著に上昇し、脂肪肝と非アルコール性脂肪性肝炎の分別も可能でした。肝組織を用いた診断指標である、脂肪化や肝細胞バルーニングや肝炎症や肝線維化を加えた多変量解析から、肝細胞バルーニングのみが血清fCK18値と有意に関連する因子であることがわかりました。生活習慣指導前後における血清fCK18値の変化量は、肝逸脱酵素や肝線維化の指標の変化量と有意に相関していました。非アルコール性脂肪性肝炎の診断や治療効果判定に血清fCK18値が有用であることが示せたことから、将来的には、国内外の医療機関でも測定できる医療システムを構築していきたいと考えています。

非アルコール性脂肪性肝炎のバイオマーカー確立 図


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研究者情報


大学院医学系研究科 消化器内科学 特任准教授
江口 暁子(Akiko Eguchi)
専門分野:細胞生物学、消化器病学、肝臓学、遺伝子デリバリー
現在の研究課題:慢性肝疾患や合併症の病態進展メカニズムの解明

大学院医学系研究科 消化器内科学 准教授
岩佐 元雄(Motoh Iwasa)
専門分野:消化器病学、肝臓学
現在の研究課題:慢性肝疾患や合併症のバイオマーカーの開発

大学院医学系研究科 腫瘍病理学 教授
渡邉 昌俊(Masatoshi Watanabe)
専門分野:消化器病学、肝臓学、腫瘍学
現在の研究課題:前立腺腫瘍微小環境、新規in vitro培養系構築・標準化、ナノメディシン、ナノトキシコロジー

大学院医学系研究科 消化器内科学 教授
中川 勇人(Hayato Nakagawa)
専門分野:消化器病学、肝臓学、腫瘍学
現在の研究課題:肝胆道における炎症・再生・発癌の分子機構解明と臨床応用