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一次シリアの近傍に脂質ラフトが集まる!〜一次シリア;新たな細胞分化シグナルの制御機構の発見〜

2021.3.17

研究の概要


 一次シリアは細胞表面から突出したアンテナのような構造で、近傍に各種ホルモンの受容体が集積しているため、細胞外の情報を感知し、細胞内シグナル伝達を誘導する重要な起点となっています。そのため、一次シリアの機能不全は、シグナル伝達の異常により様々な疾患の原因となる可能性が考えられています。
 今回、三重大学大学院医学系研究科 分子生理学教室の研究グループは、細胞がインスリンなどの刺激を受けると一次シリアの近傍(インスリン受容体が集積している場所)に脂質ラフトと呼ばれる特殊な膜成分が移動してくること;この移動により、インスリン受容体からピーアイ3キナーゼ/アクトキナーゼ(PI3K/Akt)系の活性化が生じ、脂肪細胞への分化誘導されることを発見しました。さらに、一次シリアを異常伸長させた場合、脂質ラフトの移動が阻害され、インスリン受容体からの上記シグナル系の活性化が低下し、脂肪細胞分化が抑えられることも見い出しています。また上記知見を、高脂肪食を摂取してもメタボリックシンドロームの発症を生じにくい遺伝子改変マウスの作製により、個体レベルでも実証しました。
 本研究成果は、一次シリアの異常によって引き起こされるシリア病、特に遺伝性の肥満における病態形成メカニズムの解明やメタボリックシンドロームの治療に結びつく重要な発見です。この研究成果は、国際的な米国科学誌『Cell Reports』2021年3月9日(米国東部時間11:00)に掲載されました。


詳しくはこちらをご覧ください。


研究者情報


三重大学大学院医学系研究科基礎医学系講座分子生理学分野 助教

山川 大史(YAMAKAWA Daishi)

専門分野:病態生理学

現在の研究課題:間葉系前駆細胞の一次シリアと脂肪細胞分化、筋再生




三重大学大学院医学系研究科基礎医学系講座分子生理学分野 教授

稲垣 昌樹(INAGAKI Masaki)

専門分野:細胞生物学、分子生理学

現在の研究課題:一次シリアの細胞機能と動態制御


Rナビ用

後列左から、西村先生(統合薬理学)、稲垣先生(分子生理学)、笠原先生(分子生理学)
前列左から、白水先生(統合薬理学)、山川(分子生理学)、加藤先生(分子生理学)