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深紫外線(UVC)で受けたダメージを修復するメカニズムをゼブラフィッシュを用いて解明

2022.2. 9

研究の概要


 三重大学大学院地域イノベーション学研究科の臧黎清特任講師(兼 地域創生戦略企画室特任講師)、三宅秀人教授(兼 工学部教授)、西村訓弘教授、および同医学系研究科の島田康人講師(兼 次世代創薬ゼブラフィッシュスクリーニングセンター代表)らは、ゼブラフィシュの初期胚(受精から数時間後の胚)において、深紫外線LED(UVC-LED;278nm)を直接照射した場合の安全な照射量と、紫外線によるDNA損傷を修復する分子メカニズムを解明しました。本研究成果は2022年1月18日、環境毒物や環境安全に関する学術誌『Ecotoxicology and Environmental Safety』 (Elsevier社、インパクトファクター6.291)にオンライン掲載されました。

 本研究では、UVC照射量を徐々に増やしながらゼブラフィッシュ初期胚の形態変化を評価したところ、1㎠あたりの積算光量が4.5mJ/cm2以下の場合にすべての胚が生存しました。また、7.5mJ/cm2以上の照度量では、奇形率が著しく増加し、生存率も0~37%まで低下しました。さらに、ゼブラフィッシュ胚の生体防御システムを解明するため、次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析(RNA-seq)を行いました。それにより、UVC照射で生じるDNA損傷に対して、ゼブラフィッシュ胚は、まずDNAの損傷修復に重要な役割を持つp53シグナルの伝達経路を速やかに活性化させ、3日後に免疫応答のプロセスに関わるSTATシグナル伝達経路の活性化に切り替えて、DNA修復や細胞増殖などに応答するという分子メカニズムを明らかにしました。この研究成果は、ヒトに対するUVCの応用における安全性について科学的な根拠を提供すると同時に、コロナウイルスを含むウイルスや細菌の殺菌、水産物養殖時の消毒など、幅広い領域でのUVCの活用に役立つ可能性があります。

 詳しくはこちらをご覧ください。


研究者情報


   

三重大学大学院地域イノベーション学研究科・地域創生戦略企画室 特任講師
臧 黎清(Liqing Zang)
専門分野:薬理ゲノミクス・分子生物学・実験動物学・ゲノム生物学・生理学
現在の研究課題:2型糖尿病性腎症モデルゼブラフィッシュの構築および治療標的遺伝子の探索

三重大学大学院医学系研究科・次世代創薬ゼブラフィッシュスクリーニングセンター 講師
島田 康人(Yasuhito Shimada)
専門分野:薬理ゲノミクス・バイオインフォマティクス
現在の研究課題:肥満・癌モデルゼブラフィッシュを用いた創薬研究

三重大学大学院地域イノべーション学研究科・ 工学部電気電子工学科 教授
三宅 秀人(Hideto Miyake)
専門分野:半導体工学・化合物半導体の結晶成長
現在の研究課題:窒化物半導体のナノ構造制御

三重大学大学院地域イノべーション学研究科 教授
西村 訓弘(Norihiro Nishimura)
専門分野:トランスレーショナル医科学・地域イノベーション学・産学官連携
現在の研究課題:ゼブラフィッシュ疾患モデルを用いた食品の機能性評価に関する研究 地域イノベーションに関する研究

☆集合写真-2_R
写真左から 三宅 秀人 教授、臧 黎清 特任講師、島田 康人 講師、西村 訓弘 教授