本研究成果のポイント
新しいがん血管新生治療標的であるZMYND8遺伝子は、
1)ヒト臨床前立腺がんで、発現が増加する。
2)ヒト移植がん血管新生モデルで、ヒトがん細胞と宿主細胞において発現が増加する。
3)ヒトZMYND8遺伝子発現を抑制するとヒト血管新生が阻害される。
4)宿主ZMYND8遺伝子発現を抑制するとがん血管新生が阻害される。
5)ヒトZMYND8遺伝子発現を上昇させるとがん血管新生が増加する。
リリース概要
がんは急激な成長を維持するために、栄養補給路として腫瘍血管の新生を誘導することが知られています。1970年代から、がん治療薬として血管新生の阻害薬が提案され、その後、血管新生を促す「血管上皮成長因子(VEGF)」を治療標的遺伝子として、その働きを抑制する治療薬がいくつか開発され、臨床応用されてきました。しかしながら、その治療抵抗性や副作用等が課題となっているのが現状です。
今回、三重大学大学院・医学系研究科・薬理ゲノミクスの田中利男教授らの研究グループは、ヒトゲノムと約8割の相同性を持つゼブラフィッシュを独自改良した品種「ミエコマチ」を用いて、「ZMYND8」ががん治療のまったく新しい標的遺伝子となることを発見しました。
この「ZMYND8」を標的遺伝子とすることで、「VEGF」を標的とした場合と同等の血管新生の抑制効果があることがわかっています。また、ゼブラフィッシュによる実験だけでなく、ヒトの臍帯静脈を用いた実験でも効果を示しており、今回の研究成果は今後のがん治療薬開発における新領域の開拓に成功したものと言えます。
特記事項
これらの成果は、ヨーロッパ生化学学会学術誌FEBS Lettersオンライン版に2014年8月10日に掲載されました。
2015年3月23日、本学において記者会見を行いました。
参考図
掲載論文
http://www.febsletters.org/article/S0014-5793%2814%2900721-2/abstract