研究の概要
医療の飛躍な進歩にともない敗血症の患者の急性期死亡率が減少してきましたが、一方で急性期を脱した後の長期予後における新たな問題として、一部の患者に長期的な身体機能障害や精神障害が引き起こされることがわかってきました。その中でも、ICU関連筋力低下(ICU-AW)は、集中治療を受けた患者の生活の質を著しく低下させるだけでなく長期的な死亡率にも影響する深刻な問題です。三重大学大学院医学系研究科赤間悠一医師、同大学院分子病態学朴恩正准教授、島岡要教授の研究チームは、ICU-AWの病態誘導分子メカニズムに関する重要な発見をしました。この研究では、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)と呼ばれる分子と、筋肉内2型自然リンパ球(ILC2)が産生するインターロイキン13(IL-13)が敗血症後の筋力維持に及ぼす影響を解明しました。PD-1欠損マウスモデルでは、敗血症後のICU-AWが軽減され、筋力が維持されることが明らかになり、その維持にはILC2由来のIL-13が大きく貢献している可能性があることを世界で初めて報告しました。これらの結果は、PD-1阻害剤がICU-AWに対する新たな治療法として有効な可能性を示唆しており、今後の治療戦略の開発に向けた重要な基礎データとなります。
研究成果は、2024年7月17日に「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」誌にオンライン掲載されました。
論文タイトル:Roles of programmed death-1 and muscle innate lymphoid cell-derived interleukin 13 in sepsis-induced intensive care unit-acquired weakness
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https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/jcsm.13548
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研究者情報
医学系研究科 救急集中治療医学 リサーチアソシエイト
赤間 悠一 (AKAMA Yuichi)
専門分野: 救急集中治療医学 分子病態学
現在の研究課題: 敗血症 ICU-AW 自然リンパ球
医学系研究科 分子病態学 准教授
朴 恩正 (PARK Eun Jeong)
専門分野: 分子病態学 免疫学
現在の研究課題: 粘膜免疫 マイクロRNA 炎症 エキソソーム インテグリン 敗血症
医学系研究科 分子病態学 教授
島岡 要 (SHIMAOKA Motomu)
専門分野: 分子病態学 免疫学
現在の研究課題: 慢性疼痛 医療者コミュニケーション ウェアラブルセンサー インテグリン 敗血症