研究の概要
・消費者は買物行動を通じて快楽的経験価値を知覚し、購入したブランド製品に基づく幸福感を向上させる。
・インターネット通販よりもモノブランド・リアル店舗で買物をした場合の方が上記の効果は大きい。
・一般的なブランドよりも高級ブランドの方が上記の効果は大きい。
【背景と概要】
パンデミック下においてECが加速度的に普及する中で、リアル店舗の役割が問われています。この問いに関連し、本研究は消費者のショッピング経験や購入商品に基づく幸福感と店舗形態の関係について調査・分析したものです。また、本研究ではこれらの要素とブランドの高級感の関係についても追加的分析が行われています。
【研究内容】
本研究では、国内で消費者調査(サンプル数=418)を実施し、買物経験に関する消費者の知覚を4つの店舗形態(リアル店舗vs.デジタル店舗、モノブランド店舗vs.マルチブランド店舗)に基づき分析しました。解析の結果、快楽的買物経験価値の知覚はリアル・モノブランド店舗の場合に最も向上し、その知覚が消費者の幸福感を高めていることが確認されました。また、高級ブランドの場合に当該効果がさらに大きくなることが示唆されました。購入したブランド製品に基づく幸福感とは消費者による購買行動の結果であり、将来のブランド選択行動に繋がるとみられます。この幸福感と購入店舗の形態および買物経験の関係に関する考察は、本研究独自の視点に基づくものです。さらに、本研究の結果は、従来指摘されていた高級ブランドビジネスにおけるリアル店舗の重要性を裏付けています。
【今後の展望】
本研究の結果は、デジタル化が進む今日においても「リアル・モノブランド店舗による買物経験創出」が重要なマーケティング要素であること改めて示すものです。特に高級ブランドビジネスを手掛ける企業はこの点に留意する必要がありそうです。
【用語解説】
モノブランド店舗=単一ブランド製品のみを販売する店舗
マルチブランド店舗=複数のブランド製品を販売する店舗
【論文情報】
掲載誌: Asia Pacific Journal of Marketing and Logistics(Emerald Publishing Group発行、Web of Science(SSCI)採録)
掲載日: 2021年11月11日
論文タイトル: Hedonic shopping experience, subjective well-being and brand luxury: a comparative discussion of physical stores and e-retailers
著者: 三重大学人文学部 教授 博士(商学) 熊谷 健
早稲田大学大学院経営管理研究科 教授 工学博士 長沢伸也
備考) 本研究は三重大学人文学部ブランド戦略研究ユニットに関連するものです。
詳しくはこちらをご覧ください。
研究者情報
三重大学人文学部法律経済学科 教授
熊谷 健(Kumagai Ken)
専門分野:マーケティング論、ブランド論、消費者行動論
現在の研究課題:環境マーケティング、ラグジュアリーブランディング、国内産業のブランド戦略
早稲田大学大学院経営管理研究科 教授
長沢 伸也(Nagasawa Shin'ya)
専門分野:デザイン&ブランド・イノベーション
現在の研究課題:ラグジュアリーブランディング