教育研究上の理念、目的

教育研究上の理念

21世紀の産業分野では最先端技術の進歩が極めて速く、複数の技術分野が融合することで新事業が次々と生み出され、国境を越えてグローバルに展開す ることが日常的に起こっています。このような「21世紀型新産業社会」とでも定義づけられるビジネス・フィールドでは、新しいタイプの高度ビジネス人材が中核人材として求められ、最先端の科学分野での高度な研究開発能力を持ち、種々多様な情報を基に、新事業・新製品の企画から製品の市場への投入までを完結で きる「プロジェクト・マネジメントができる研究開発系人材」が理想的な人材像として想定されています。しかしながら、単一の専門能力養成に特化している既存の大学院教育では、このような21世紀型新産業社会が求める新しいタイプの多能型の高度人材の養成には対応できておらず、「プロジェクト・マネジメントができる研究開発系人材」は、現在の大学院教育では最も養成ができていない人材層です。

一方、産業界を見渡すと、一部上場企業などグローバル企業では、大学が対応できていない人材作りを補完するように、ビジネスの実践を通したOn the Job Training (OJT) 教育によって「プロジェクト・マネジメントができる技術系人材」を社内養成するシステムが確立されており、大企業が集積する東京圏などの都市部では、この ような高度人材は潤沢に蓄積されています。これに対して、中小規模の企業群で構成される地方産業界では、都市部と同様にグローバリゼーションの波を受け、地方企業であっても成長のためには世界規模の競争が避けられない時代となっていますが、大企業並みの技術開発力とそれを牽引する高度人材の確保には対応できておらず、このことが地域産業の成長を阻害する大きな要因となっています。以上のように現代社会では、三重地域圏のような地方産業界においてこそ、新たな事業の開拓を牽引する中核人材として「プロジェクト・マネジメントができる研究開発系人材」の確保が強く求められています。また、このような中核人材を育成し地方産業界に供給することが、地域発のイノベーションを誘発するために最も効果的な処方になると本学では考えています。

さらに、地域にとって待ったなしの状況にあるのは、少子高齢化に伴う「消滅可能性都市」問題です。平成24年に日本創成会議・人口減少問題検討分科会が発表した提言「ストップ少子化・地方元気戦略」によれば、人口の移動が現状のまま推移した場合、三重県の29市町のうち約半数は、2040年までに「消滅可能性都市」になるとされています。これらの地域は三重県南部に集中していますが、これらの市町は観光資源に恵まれた市町や日本有数の漁獲高を誇る市町でもあります。三重県南部の市町が自治体として存立できなくなれば、三重県そのものの存立も大きく脅かされ、いずれは我が国全体の衰退につながることは明らかです。このような状況を打破するためには、若年人口の流出を止め、若者が自身の手で地域を守ることを可能にする施策を直ちに講じ、「地域の自立」を目指さなければなりません。これを実現するためには、地域にイノベーションを起こせる人材を教育し、科学技術と社会の変革により、地域の企業や行政において新しい価値を創り出す「地域にゼロから1を創造できるソーシャル・アントレプレナー」人材を養成する必要があります。

以上の認識に立ち、三重大学では、現代の産業社会、特に三重地域圏などの地方産業界で生じている社会ニーズと大学院における教育のかい離を打破し、地方の衰退を食い止められる人材を養成するために「地域イノベーション学研究科」(以下、「本研究科」という。)を設置し、「プロジェクト・マネジメントができる研究開発系人材」および「地域にゼロから1を創造できるソーシャル・アントレプレナー人材を育成し、地域社会に輩出しようとするものです。地域の活性化に貢献することは本学のような地域圏大学にとっては重要な存在意義を実現するものです。

研究科の目的

地方産業界が求める即戦力型人材であるプロジェクト・マネジメントができる研究開発系人材の育成に特化した教育・研究を展開することにより、高度な専門知識及び応用能力を持ち、創造性豊かな研究開発活動を進める高度専門職業人及び研究者を養成し、地域社会の将来を担う中核人材を育成するとともに、地域の企業や自治体等が抱えている成長障害要因の克服に必要な学際的研究を実施し、その成果を社会に還元することを目的とします。

博士前期課程の目的

専門分野における研究開発担当者として、研究課題を取り巻く総合的な状況を考察し、解決策を構築していく製品化のための研究開発プロジェクトのマネジメントができる研究開発系人材を養成することを目的とします。

博士後期課程の目的

自立した研究者として、研究開発成果を基にした新規事業プランの立案からその事業化までの企画・執行・調整に関する総合的なマネジメントを行う事業化プロジェクトのマネジメントができる研究開発系人材を養成することを目的とします。