心筋梗塞の原因遺伝子を発見

2017.3.27

三重大学先端科学研究支援センター 山田芳司教授は,筑波大学、名古屋工業大学、東京都健康長寿医療センターとの共同研究により,心筋梗塞の発症に強く関連する遺伝子を発見しましたので,発表いたします。

この発見により,心筋梗塞をおこす危険性の予測が可能となり,個人の遺伝情報に基づいた個別化予防に役立つことが期待できます。

「心筋梗塞の原因遺伝子」の研究成果は,米国医学誌「Oncotarget」に掲載されました。

Oncotarget URL

http://www.impactjournals.com/oncotarget/index.php?journal=oncotarget&page=article&op=view&path[]=16536&path%5B%5D=52889

(2017年3月24日オンライン)


また「循環器疾患の遺伝的リスク検出法」として2017年3月6日に特許出願しました。

  • わが国では、悪性腫瘍に続き心疾患が死因の第2位を占めます。心疾患の中で主要な疾患が心筋梗塞や狭心症のような冠動脈疾患(虚血性心疾患)です。厚生労働省の統計によれば、わが国の平成26年の心疾患による死亡数は196,926人であり、このうち虚血性心疾患が73,885人(心筋梗塞38,991人)を占めます。急性心筋梗塞患者の14%は病院に搬送される前に心停止となり、急性期死亡率(発症から30日以内の入院中の死亡率)は6~7%です。したがって、急性心筋梗塞患者の20%が1ヶ月以内に死亡します。

  • 医療技術の発達により心筋梗塞の急性期の治療法は格段に進歩しましたが、予防対策は未だ十分とは言えません。また塩分や脂肪摂取の制限、適度な運動、禁煙など従来の予防法は集団としては一定の効果が認められますが、必ずしもすべての人にとって有効とは言えません。日頃健康で危険因子もない人が突然心梗梗塞をおこすことは良く知られている事実です。

  • 心筋梗塞の発症にはライフスタイルや環境要因に加え、遺伝因子が大きく関与しています。疫学研究により、心筋梗塞・冠動脈疾患の発症には遺伝因子が40~50%関与していることが明らかになっていますが、多数の遺伝子が関与しているため、まだ十分解明されていません。高齢化社会を迎えた我が国においては、心筋梗塞の発症に関連する遺伝子を特定し、個別化予防(個人個人の体質に合った最適な予防)を積極的に推進することが重要です。

  • 三重大学先端科学研究支援センターは、筑波大学、名古屋工業大学、東京都健康長寿医療センターおよび研究参加病院(岐阜県立多治見病院、岐阜県総合医療センター、名古屋第一赤十字病院、いなべ総合病院、春日井市民病院、弘前大学、弘前脳卒中・リハビリテーションセンター)との共同研究により、心筋梗塞の発症に強く関連する遺伝子を発見しました。今回の発見により心筋梗塞をおこす危険性の予測が可能になり、個人個人の遺伝情報に基づいた個別化予防に役立つことが期待できます。またこの遺伝子を標的とする新しい治療法の開発に応用できる可能性も生まれました。

1心筋

  • ヒトゲノム上のエクソーム全領域に分布する約24万個の一塩基多型(single nucleotide polymorphism, SNP)を解析できるエクソームアレイを用いて、11,648例(心筋梗塞2438例、対照9210例)においてエクソーム全領域関連解析を行い、心筋梗塞の発症に強く関連する遺伝子STXBP2(syntaxin binding protein 2)およびSNP rs188212047 [G/T (Lue212Phe)]を発見しました。
  • 最初に24万個のSNPsそれぞれについて、心筋梗塞群と対照群におけるアリル頻度を比較した結果、114個のSNPsが心筋梗塞と有意に(P < 1.21 × 10-6)関連しました。次に114個のSNPsと心筋梗塞との関連について、多重ロジスティック回帰分析を用いて年齢、性別、高血圧、糖尿病、脂質異常症を補正して解析した結果、STXBP2のrs188212047が心筋梗塞に有意に(P = 4.84 × 10-8、オッズ比2.94)関連しました。SNP rs188212047はG→T多型であり、GT型の人はGG型に比べて2.94倍心筋梗塞になりやすいことが明らかになりました(TT型の人はいませんでした)。
  • STXBP2遺伝子とSNP rs188212047 [G/T (Lue212Phe)]が心筋梗塞の発症に関連することを発見したのは世界で初めてです。

修正

20170327_yamada

三重大学 地域イノベーション推進機構 先端科学研究支援センター
教授 山田 芳司(Yoshiji Yamada)

専門分野ゲノム疫学・機能ゲノム科学
現在の研究課題2型糖尿病・メタボリックシンドローム・脂質異常症・肥満のゲノム疫学・機能ゲノム科学 循環器疾患(心筋梗塞、冠動脈疾患、高血圧、大動脈瘤、心房細動)のゲノム疫学・機能ゲノム科学 脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)のゲノム疫学・機能ゲノム科学 慢性腎臓病・痛風のゲノム疫学・機能ゲノム科学



【参考】
 地域イノベーション推進機構 先端科学研究支援センター http://www.lsrc.mie-u.ac.jp/
 教員紹介ページ(山田 芳司) http://kyoin.mie-u.ac.jp/profile/1375.html