糖尿病の進行抑制物質の発見

2016.6.10

 三重大学では、5月17日に記者会見を開催し、大学院医学系研究科免疫学ガバザ・エステバン教授、医学部附属病院糖尿病・内分泌内科矢野裕准教授、大学院医学系研究科免疫学安間太郎助教より、「糖尿病の進行抑制物質の発見」について発表をしました。
 もともと、血液凝固を抑えるタンパク質として知られていたプロテインSが、膵臓のβ細胞破壊を抑制し、糖尿病の進展抑制に有効であることを明らかにしました。そして、このプロテインSが糖尿病腎症の進行に対しても治療効果を示すことを明らかにしました。この研究により、糖尿病および糖尿病腎症の新たな治療開発に貢献することが期待されます。

 米国糖尿病学会誌『Diabetes』
 URL:http://diabetes.diabetesjournals.org/content/early/2016/04/07/db15-1404
(2016年5月9日オンライン)

  • 糖尿病は、インスリンの作用が十分でなく、血糖値が高くなっている状態であり、世界の糖尿病人口は、4億1,500万人(2015年)である。
  • 三大合併症である神経障害・網膜症・腎症や脳卒中、心筋梗塞、狭心症、壊疽などを引き起こす。
  • インスリンは、膵臓のβ細胞から分泌され、血中のブドウ糖を末梢組織に取り込み、血糖値(血中ブドウ糖濃度)を下げるホルモンである。
  • 膵β細胞の破壊(アポトーシス)によるインスリン分泌障害は糖尿病の発症・進展に関与する。
  • 膵β細胞の破壊(アポトーシス)を抑制する有用な治療法は未だ確立されていない。また、糖尿病腎症に対しても現在の治療では進展抑制に限界があり、根本的な治療方法が必要とされている。
  • プロテインSは、主に肝臓で産生され、従来より血液凝固を抑えるタンパク質としてしられていたが、近年、免疫系に作用し炎症や細胞死を抑える効果を発揮することが報告されるようになった。
  • 糖尿病患者では、健常者に比べて血液中のプロテインSの濃度が有意に低下していた。
  • 1型糖尿病マウスモデルに、ヒトプロテインSの遺伝子を過剰に発現させたり、体外からヒトプロテインSを投与した。その結果、膵β細胞の破壊(アポトーシス)が抑制され、血糖値の上昇が抑えられた。
  • 培養細胞を用いた実験でもヒトプロテインSは膵β細胞の破壊(アポトーシス)を抑制した。
  • 2型糖尿病マウスモデルでは、ヒトプロテインS投与によりインスリン抵抗性を改善した。
  • ヒトプロテインSの過剰発現及び、外因性ヒトプロテインSの投与により糖尿病腎症の進展が抑制された。
  • 膵β細胞の破壊(アポトーシス)の抑制は、糖尿病治療の進展抑制につながる極めて重要な作用であり、また同時に合併症の進展を抑制する効果も示され、本研究の成果が、新規治療薬の開発につながることが期待される。
    • 用語説明
    • ヒトプロテインS・・・分子量8万4,000のビタミンK依存性蛋白で肝臓で産生される。活性型プロテインCの補酵素としてはたらき、凝固第Ⅷa, V a因子の失活化を行う。近年、凝固を抑える作用以外に炎症の抑制、アポトーシスの抑制など様々な作用を有することが報告されている。
    • 1型糖尿病・・・自己免疫的機序により膵β細胞が選択的に破壊され、インスリンの絶対的不足が原因となって発症する糖尿病。
    • 2型糖尿病・・・肥満、運動不足、ストレス、加齢などの環境因子と遺伝因子が関与し、インスリン抵抗性とインスリン分泌不全により相対的なインスリン不足が原因となって発症する糖尿病。







医学系研究科 生命医科学専攻 基礎医学系講座 免疫学
助教 安間 太郎(Yasuma, Taro)









医学部附属病院 糖尿病・内分泌内科
准教授 矢野 裕(Yano, Yutaka)








医学系研究科 生命医科学専攻 基礎医学系講座 免疫学
教授 ガバザ エステバン(Gabazza)










【参考】
 医学系研究科 http://www.medic.mie-u.ac.jp/
 教員紹介ページ(安間 太郎)http://kyoin.mie-u.ac.jp/profile/3061.html
 教員紹介ページ(矢野 裕)http://kyoin.mie-u.ac.jp/profile/2069.html
 教員紹介ページ(ガバザ エステバン)http://kyoin.mie-u.ac.jp/profile/2123.html