北極温暖化の新プロセス シベリア「大気河川」の海氷上の滑翔が北極上空を熱する

2018.3. 5

三重大学大学院 生物資源学研究科 教授 立花義裕、同研究科 小松謙介研究員、アラスカ大学 V.アレクセーフ教授、モスクワ大学 I.レピナ博士の研究チームは、ロシア砕氷船から北極海の海氷上で観測気球を打ち上げ、北極温暖化の包括的な説明に資する新説を見いだしました。
シベリア上空の水蒸気が川のように北極に流れ込みます。研究チームはこれを「シベリア大気河川」(Siberian Atmospheric Rivers)と名付けました。シベリア大気河川は、海氷の影響で冷やされた海氷上の冷たい大気(cold dome)の上に乗ってグライダーのように極向きに滑翔し、上空で雲が発生します。気体である水蒸気が水(雲)に変わるときに発する凝結熱が大気を暖めることで、北極中心部の上空の大気を暖めます。これは海氷、大気、陸上と別々に行われていた研究を包括することで得られた成果です。北極温暖化が関与する地球規模の異常気象の解明にも寄与する研究です。

本研究はネイチャー・パブリッシング・グループの学術雑誌「サイエンティフィックレポート(Scientific Reports)」に掲載されました。

https://www.nature.com/articles/s41598-018-21159-6

(2018年2月13日オンライン)

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図1 

20180222_Rnavi図2

図2

ロシア砕氷船の航路(黒色の線に沿って船が動き、黒丸上で観測気球を打ち上げた)と、観測期間中の平均的な海氷分布(白から薄青色領域.青色領域は海氷が無い海水面)

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図3

観測地点(赤丸)に流れ込んだ大気河川(Atmospheric River)の様子。
緑から赤の色は水蒸気の流れの強度を現す。赤いところほど水蒸気の流れが強い。黒は数値計算で粒子追跡した赤丸上空高度1.3kmに到達した水蒸気の流れ。

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図4

図3の黒線に沿った鉛直断面図。
左がシベリア側で右が北極側、縦軸は下が地表面で上が上空。下の図は海氷量を表す。図中の黒線は計算で追跡した北極に向かう粒子の動きを表し、右に向かうほど上空に滑翔していることが読み取れる。
滑翔は海氷が存在する少し前から始まっている。上の図中の赤色は、発生した熱量を現し、滑翔に伴って赤色が目立つ。これが水蒸気の相変化による加熱を現している。

20180301_立花先生 (1)大学院 生物資源学研究科 共生環境学専攻 地球システム学 気象・気候ダイナミクス 
教授・立花 義裕(Yoshihiro Tachibana)


専門分野気象学・気候力学
現在の研究課題:異常気象に関係する様々なスケールの気象現象、偏西風の蛇行、北極振動、海洋や海氷が気象や気候に及ぼす影響

【参考】
 教員紹介ページ(立花 義裕) http://kyoin.mie-u.ac.jp/profile/2504.html
 個人ホームページ http://www.bio.mie-u.ac.jp/kankyo/shizen/lab1/


20180301_立花先生 (2)大学院 生物資源学研究科 共生環境学専攻 地球システム学 気象・気候ダイナミクス 
研究員・小松 謙介(Kensuke Komatsu)


専門分野気象学
現在の研究課題:北極域の気象現象、三重県の鈴鹿颪、日本海筋状雲の日本への影響