32年ぶりの大寒波は温暖化の影響か?~北極海アラスカ沖に空いた海氷の巨大な穴が作る偏西風蛇行~~強い寒波と豪雪は今後も頻発する!?~

2019.5. 8

研究の概要



生物資源学研究科の立花義裕教授が、32年ぶりの大寒波に温暖化が影響していることを発見しました。


1.遠く離れた二つの地域の異常な気象現象


2017-18 冬(昨年の冬)は,西日本を中心として32年ぶりの記録的大寒波年となりました.福井県等の北陸地方において記録的豪雪もあり,平昌の冬季オリンピックも大寒波に悩まされました.一方,北極ではアラスカ沖の北極海の海氷が観測史上最も少なく,「大穴」のように空いた海氷が少ない場所の上空の気温が観測史上最高となりました(左図参照).これらの遠く離れた記録的な異常の間には密接な関係があることが分かりました.

図1 図2



2.新説


我々は,この「海氷の巨大な穴」を,暖穴(warm hole)と命名しました.そしてこの暖穴が,遠く離れた日本の記録的寒波の遠因となる説を提唱しました(左図参照).暖穴は北極上空の気温上昇をもたらします.北極の寒気と中緯度の暖気の境界で吹く偏西風は,暖穴による北極域の昇温によって北へ迂回させられます.この偏西風の北極への進入は,それに伴う偏西風の南北への蛇行をもたらします.その結果,暖穴を中心とした東西に北極の寒気は押し出され,東アジアと北米の両地域に寒波をもたらすという説です.

北極上空の寒気が東アジアと北米に分裂したのです.歯磨き粉のチューブを真ん中で握ると中身がムニュッと両サイドへ分かれるイメージです.海氷に穴が開いたので,暖穴に向かって「大気の河川(atmospheric river)」が流れ込み易くなります(右図の黄色の矢印).「大気の河川」は暖湿な風なので,北極上空をさらに暖めます(右図黄色の矢印).この 暖湿な南風は,海氷を北へ北へと後退させ,暖かい太平洋の海水も北極へ流入させ,海氷を融解させます(右図の下部の右向き赤矢印).

これらより,北極上空の暖気(左図の赤の円柱)が維持され,寒気の分裂も維持され,そして東アジアや北米への寒波も維持されます.



図3



3.社会的意義と今後の見通し


北極海アラスカ沖の海氷激減が、中緯度の異常気象をもたらす可能性を示した世界初の論文です.地球温暖化に伴い,今後は暖穴が拡大することが予測されます.これは今後日本や北米に昨冬よりも強い寒波が襲来する可能性が強まる事を示唆しています.暖穴は,大寒波の一因となるため,今後異常気象の頻度は高まる可能性があります.今冬(2018-19)の北米の史上最強の寒波も、これが原因かもしれません.「温暖化」の単語に惑わされず,豪雪災害対策や寒波対策を強化すべきでしょう.




本研究成果は、英国ネイチャー・パブリッシング・グループの学術誌「サイエンティフィックレポート (Scientific Reports)に2019年4月3日に掲載されました。

DOI : 10.1038/s41598-019-41682-4

https://www.nature.com/articles/s41598-019-41682-4

本研究の一部は、北極域研究推進プロジェクト(ArCS)と文部科学省科学研究費補助金「挑戦的萌芽研究:北極振動と南極振動の「メタ・テレコネクション」~両半球をつなぐ航路は何か~」で実施されたものです。

著者:立花義裕教授・小松謙介研究員・安藤雄太大学院生 (三重大学・大学院 生物資源学研究科 共生環境学専攻 地球環境学講座) ,V. A. Alexeev・ L. Cai (アラスカ大学・国際北極研究センター)

論文タイトル:Warm hole in Pacific Arctic sea ice cover forced mid-latitude Northern Hemisphere cooling during winter 2017-18

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研究者情報


20180208_立花先生Rナビインタビュー (41)

大学院生物資源学研究科・生物資源学部 共生環境学専攻 
地球環境学 気象・気候ダイナミクス 

教授 立花 義裕(Tachibana, Yoshihiro)

専門分野:気象学・気候力学
現在の研究課題:異常気象に関係する様々なスケールの気象現象、
偏西風の蛇行、北極振動、海洋や海氷が気象や気候に及ぼす影響

【参考】

教員紹介ページ(立花 義裕) http://kyoin.mie-u.ac.jp/profile/2504.html

個人ホームページ http://www.bio.mie-u.ac.jp/kankyo/shizen/lab1/