- 三重大学長ブログ -

三重大学長ブログです。

工学研究科・工学部「三重大学のトップレベルの研究を牽引」

今回は、工学研究科長・工学部長の池浦良淳先生に工学部について伺いました。

伊藤学長(右)と池浦研究科長(左)

三重大学工学部は昭和44年に機械工学科と電子工学科の2学科で設立された後、4学科を増設して計6学科となりました。令和1年度で行われた学科改組では、「総合工学科」1学科となり、機械工学、電気電子工学、応用化学、建築学、情報工学、総合工学の6コースから構成される形となりました。
大学院博士前期課程は、「機械工学」、「電気電子工学」、「分子素材工学」、「建築学」、「情報工学」「物理工学」の6専攻、博士後期課程は、「材料科学」および「システム工学」の2専攻が設置されています。
博士前期課程には、学部修士一貫性コースも新設されており、4年次で修士研究を進め、卒業研究に代えて長期インターンシップ(実働30日)を選択することも可能です。その後、5年次進級時に学士(工学)の学位が授与され、海外留学や地域と協働した海外インターンシップを取り入れることができるなど特色のあるカリキュラムとなっています。
工学部定員は、1学年400名、博士前期課程216名、博士後期課程16名で、三重大学では最も学生数の多い学部・研究科です。教員数は100名弱で、教員一人当たりの学生数は20名強となりますが、その中でFace-to-Faceによる丁寧な教育や研究に取り組んでいただいています。

三重大学の工学部は、企業と大学の共創教育を目指しています。池浦先生のお話から、本学の工学部には、社会や企業などから期待されている知識やスキルを身に付けられるよう、研究を自由な発想で行える環境が整えられていることが強みの一つになっていることを改めて強く認識しました。
工学部卒業生の活躍の場は、すでに製造業、建築業、電気・ガス業、運輸・情報通信業など多岐にわたっています。これからは産業構造が大きく変わり、特に情報工学に関わる社会的ニーズは飛躍的に高まってくるでしょう。
池浦先生は、こうした将来的な変化に応える教育プログラムの必要性を見据え、「基礎をしっかりと勉強し、それを応用した研究ができる教育環境と同時に、社会からの要請・要望の高い産業分野を横断した総合的な能力の育成に対応できる体制が重要である」と強調されていました。その上で、「今後は、地域連携人材育成プラットフォームなどを通じて、愛知県、三重県、大阪府といった近隣県で活躍される企業との連携を深めたり、学生支援のための奨学金制度を創設したりしながら、人材育成や地域創生となる共同研究を進めていきたい」とお話されていました。

対談の様子

教育とともに、活発な研究も本学工学部の特徴です。三重大学には、世界トップレベルの研究を支援する「卓越型リサーチセンター」がありますが、工学部もここを研究ハブとして様々な成果を生み出しています。
三宅秀人教授の特異構造の結晶科学(LED)研究、今西誠之教授の次世代型電池の研究、そして、池浦先生の人間共生ロボティックス・メカトロニクス研究もその一つです。また、最近では、村田博司教授のbeyond 5Gの研究も社会実装に向け動き出すなど、本学を代表するいくつもの研究が工学部において行われています。

また、三重大学は、地域拠点として県内に4つのサテライトを開設していますが、その一つである北勢サテライトで中心的な活動を行っているのも工学部です。各種研究会の実施や地域に出向いた組織的な工学部の研究活動の紹介、共同研究の橋渡しなどが実践的に行われています。
三重大学は地域共創大学としての活躍をこれまで以上に高めていく予定です。池浦先生は、「工学部の卒業生は大企業からの求人が多く、就職先の多くは、愛知県、関東圏・関西圏となってしまう。県内企業を含めたこの地域に根付く人材や頭脳の確保に向けて、どのように就職を支援していったらよいか検討していく必要がある」と取り組むべき課題をあげられていました。これは、地域共創大学としての立場から、非常に大切な点です。

最後に、池浦先生の研究内容についてお伺いしました。
前述の通り、池浦先生はロボティックス・メカトロニクスの研究者で、本学に「人間共生ロボティクス・メカトロニクスリサーチセンター」を開設されています。この研究分野は、人間の運動機能の補助となる共生型の技術をソフト・ハードの両面から開発を行い、社会課題の解決を目指していくというものです。
具体的には、作業用姿勢アシスト技術、自動車の運転アシスト技術、さらには医療・福祉分野にも応用できるものなど、人間をアシストする技術の開発が対象となっています。
今回の対談の際にも、ドライビングシミュレーターによる運転者の負担分析に基づく疲れにくいドライバーズシート、人間の運転特性に則した自動運転システム、筋肉の負担を軽減し長時間作業でも腰痛発症を予防できる作業用姿勢アシスト技術などを実際に見学させていただきました。それぞれが社会実装可能な技術で、すでに実用化が見えるところまで開発が進んでいるものもあり、研究成果の社会への還元が目に見えるようで大変楽しみな、わくわくするものばかりでした。

作業用姿勢アシスト技術を身に着ける伊藤学長

来年度から始まる三重大学の第4期(2022年度~2027年度)では、地域共創活動の大きな柱の一つに北勢サテライトを活用した産学官連携の活動を据えます。この活動の中で、工学部は大変重要な役割を果たし、さらなる活躍を見せてくれるものと大いに期待を寄せています。

伊藤学長(左)と池浦研究科長(右)