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イルカは水中であくびをする?!

2021.7.14

研究の概要


 三重大学大学院 生物資源学研究科 博士後期課程3年の榎津晨子さんは、同研究科の森阪匡通准教授、吉岡基教授の指導の下、南知多ビーチランドほかとの共同研究によって、飼育下のハンドウイルカがあくびをすることを発見しました。完全に水中生活をする哺乳類におけるあくびの,世界初の報告となり、あくびの定義を覆す新発見でした。
 私たちは眠いときにあくびを自然と行ってしまいます。あくびはセキツイ動物の様々な動物で見られていて、その定義は、「初めに口をゆっくり開けて空気を吸い、次に口の大きさが最大に達し、最後に短く空気を吐き出して口を閉じる」とされています。榎津さんは南知多ビーチランドでハンドウイルカを長時間(のべ119時間)観察し、口をゆっくり開け、最大をしばらく維持し、その後急速に閉めるという、あくびのような行動を5例発見しました(図1)。そのあくびのような行動は、すべて活発ではないときに起こっていたことなどから,ハンドウイルカはあくびをすると結論づけました。

 本研究によって、呼吸ができない水中でイルカはあくびをすることがわかり、あくびは呼吸を伴わなくてもすることができることがわかりました。つまり、あくびの定義を変えないといけないことになります。哺乳類の水中でのあくびは世界初の報告ではありますが、人間の胎児も羊水中であくびをするという報告もあるので、あくびの定義から「呼吸」に関する部分を取り払うことはもっともらしいと考えています。私たちが普段何気なく行っているあくびも、よく考えればとても奥が深く、まだまだ解明されていない行動です。

図1 

 図1.あくびをするハンドウイルカ

 本研究成果はオランダの学術雑誌Behavioural Processesに2021年6月12日にオンライン掲載されました。
 Yawn-like behavior in captive common bottlenose dolphins (Tursiops truncatus)
 https://doi.org/10.1016/j.beproc.2021.104444
 詳しくはこちらをご覧ください。


研究者情報


   

榎津

物資源学研究科 博士後期課程3年
榎津 晨子(Akiko Enokizu)
専門分野:動物行動学
現在の研究課題:水に棲む哺乳類にあくびが存在するか・哺乳類におけるあくびの進化

森阪

生物資源学研究科 附属鯨類研究センター 准教授
森阪 匡通(Tadamichi Morisaka)
専門分野:生物音響学・動物行動学・鯨類学
現在の研究課題:鯨類における興味深い行動の記載・鯨類の保全に関わる要素技術の開発・鯨類のコミュニケーションや社会に関する基礎研究


吉岡教授

生物資源学研究科 教授
吉岡 基(Motoi Yoshioka)
専門分野:海生哺乳動物学・繁殖生理学
現在の研究課題:鯨類の繁殖生理機構の解明・伊勢湾に生息するスナメリの生態解明