- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

思いがけない東京芸大ツアー(3)
~芸術家のパワーを感じたすばらしい一時~

 前回のブログでは、音楽学部のご紹介をさせていただきましたが、今回は、美術学部の見学です。

geidai01S.jpg  風情のある赤レンガの建物群にしばし見入っていたら、そのうちの一つに「保存修復日本画研究室」があるというので、そこを覗かせていただくことになりました。中に入ってみると、何やらすりこぎみたいなもので料理?をつくっている人がいると思ったら、糊を作っているとのこと。さまざまな技術を使って、何年もかけて1枚の歴史的な絵を模写します。私は“模写”という言葉からは、独創を重んじる芸術からすると、一段低いイメージを抱いていたのですが、なんのなんの、これは、最高の技術と根気のいるたいへんな作業であることがわかりました。別の階では、ふすまや屏風などの保存修復の作業室がありましたが、ここでもまず糊から作るんですね。何事もまず目に触れない努力から始まるのですね。

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 赤レンガ館のあるキャンパスから道を渡って、美術学部のメインのキャンパスに入り、まず案内されたのが石膏像が収納されている部屋。昨年(2008年)7月にNHKの「爆笑問題の日本の教養」で学長の宮田亮平さんとのやりとりが放映された時に映っていた部屋で(http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/20080715.html#thistime)、ここでは美術学部の皆さんが写生などをするんですね。

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 それにしても石膏像の巨大さには圧倒されますね。ご案内いただいた研究担当理事・副学長の北郷悟さん(彫刻家)といっしょに、ミケランジェロの「ジュリアーノ・デ・メディチの墓」を模造した石膏像の前で記念撮影。石膏像が傷んでいるのは、かつて雨漏りも経験した芸大の歴史の跡。それにしても、有名なロダンの「青銅時代」がそれとなく置いてあるとは。

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三浦さん,北郷さん,私,渡邊さん

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ロダン「青銅時代」

 次は、何やら工事現場のような風景ですね。丸太がころがっており、防塵マスクをつけた人が大きな石を機械で削っています。部屋の中では学生さんや先生が、ところ狭しと、木を削っていました。一人ひとりの制作途中の作品を見せていただくと、実に個性的で、そのたくさんの個性を、この一部屋の中で一望できるのは壮観ですね。いつまで見ていても飽きません。

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 さて、いよいよ学長の宮田亮平さんのご専門である鍛金(たんきん)の制作室を訪問しました。準教授の篠原行雄さんに案内をしていただきました。要するに鍛冶屋さんなんですね。金床(かなとこ)や炉やプレス機などの金属加工をする道具が並んでいます。神棚があるのも加治屋さんらしいですね。

 

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 鍛金の学生さんがまず最初に造るものは、金づち。道具を自分でつくることから始まります。学生さんや先生がそれぞれ自分の金づちをたくさん持っているんです。単に金づちと言っても、太いものや細いもの、表面がつるつるしているものやざらざらしたものなど、自分の思い通りの作品が造れるように、いろんな種類をそろえておられます。ここでも、人目に触れないところでの努力の大切さがわかりますね。

 

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 いったいどうやって一枚の平たい金属板から、花瓶のような丸い入れ物ができるのでしょうか?篠原さんが実際に金づちでたたいて、デモをしてくれました。まさに芸術ですね。

 

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 すっかり暗くなって写真も取りづらくなった頃、最後に鋳金(ちゅうきん)の制作室を見学しました。鋳型を焼成する窯と、金属を溶かす溶解炉がありますね。芸大では昔ながら伝統的な工法で鋳造を教育しておられるとのことです。

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 駆け足で案内をしていただいた東京芸大ツアーで、ほんの一部を見せていただいただけなのですが、芸術家のパワーを肌で感じたすばらしい一時でした。学長の宮田さんは、最近も「財部ビジネス研究所」に出演されるなど、マスコミに積極的に登場され、また、身近な展覧会やコンサートなどを開催され、積極的に大学を一般の住民に身近に感じてもらおうと努力しておられますね。国立大学法人化後、三重大も地域の皆さんとの距離をずいぶんと縮めたと思っていますが、芸大もすばらしい方向で努力されていることを感じました。

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 最後に、東京芸大卒業の先生方が三重大において大きな貢献をしていただいていることに感謝いたします。また、三重大名誉教授の宮田修平先生は、芸大の宮田学長のお兄さんで、三重大のシンボルマークのデザインや、図書館にあるかわいらしいふくろうの置物も宮田修平さんの作品なんです。これからも東京芸大のご発展と地域や大学間の連携の促進に大きな期待をしたいと思います。