- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

上手とは言えない"勢水丸"の字を見るたびに、みんなの気持ちを思い出してね
~三重大学大学院生物資源学研究科附属練習船「勢水丸」竣工記念式典にて~

 3月7日は松阪港で、三重大の練習船“勢水丸”の竣工記念式典が開かれました。衆議院議員の川崎二郎さん、坂口力さん、副知事の江畑賢治さん、松阪市長の山中光茂さん。文科省高等教育局専門教育課長の藤原章夫さんをはじめ来賓の方々や関係者100人以上が見守る中、停泊中の勢水丸の前で、式典は始まりました。名古屋大や東京海洋大の先生、また、津高校の校長先生も来ていただきました。勢水丸は三重大だけでなく、名大など、この地域の大学と共同利用していますし、また、高校生の実習や小学生の見学にも使っていただいているんですよ。

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 式典は私の挨拶から始ったのですが、なにしろ猛烈な風の吹く中での挨拶で、しゃべる方も聞いている方もたいへんでした。応援団の皆さんには、寒い中いっしょうけんめいエールを送っていただきました。応援団なしでは、とてもさびしい式典になっていたと思います。

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 実は86の国立大で練習船をもっているのは、たった7つだけなんですよ。全部で13隻あるんですが、中部地域では唯一勢水丸だけなんです。だから、この船は三重大のためだけではなく、中部全体の海洋教育、海洋研究、そして地域貢献のためにかけがえのない船なんです。

 私が学長になった2004年に、先代の勢水丸を視察したところ、学生をのせて外洋に航海した時に浸水騒ぎをおこし、船底には、あいた穴のつぎはぎがしてあったんです。これでは、大切な学生さんをお預かりしている大学として責任が持てないということで、さっそく国へ新船建造の要求を始めました。

 それまで、耐用年数が来た船から順に新船が建造されてきたので、全国の国立大を見渡して三重大は2007年度に予算がつくはずだと思い込んでいたんです。ところが、予算が決まる直前に専門教育課を訪れたら、予算がつくかどうかわからないと言われ、びっくりして帰ってきました。聖域なき財政再建ということで、練習船の予算の削減を財政当局から求められたんですね。

 三重大の船ができないということは、中部地域全体にご迷惑をおかけし、耐用年数が来て新船建造の順番を待っている全国の国立大にも迷惑をかけるので、国会議員の皆さんにも練習船の重要性を訴えました。

 最終的には、練習船をもつ7大学が協議をし、船を減らすことも視野に入れて、共同運航などの効率化をさらに図るということで、ようやく予算をつけていただくことになりました。その後、三菱造船下関造船所にて順調に新勢水丸建造が進みました。

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 このような苦労をしてやっと実現した竣工記念式典は、元研究科長の天野秀臣さんや建造委員長の前川行幸さんとともに、このいきさつを知る者にとっては、感激もひとしおでした。

 勢水丸は最新鋭の機能をもち、スクリューの音も静かで、津の渚町と中部空港を往復している高速船よりも揺れが小さいとのことです。操舵室は、一見ゲーム機をいじくる感覚かもしれませんね。ハンドルをぐいっとひねると、船がその場でぐるっと回転するそうですよ。学生の寝泊まりする部屋は最上階にあり、万が一遭難した時は早く避難できるように安全に配慮しています。もちろん男性と女性の部屋は分かれていますよ。

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 海底の地形が分析できる機械など最新鋭の研究機器を備え、海に囲まれた我が国にとって、大切な海洋研究の進展が期待され、また三重県の危機管理局と直結した防災無線も全国ではじめて搭載し、大災害時にも一役買います。

 船体をかざる “勢水丸”の字は、あまり上手とは言えませんが、建造にかかわった皆さんの熱い思いを私が代表して書いたものです。この船を利用する学生さんや教職員のみなさんには、この“勢水丸”の字を見るたびに、「しっかり勉強し、素晴らしい研究をし、地域に貢献し、そして、安全に航海をしてくださいよ。」というみんなの気持ちを思い出していただけるといいなと思っています。

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 引き続き松阪フレックスホテルで開かれた祝賀会には、衆議院議員の田村憲久さん、津市長の松田直久さんも駆けつけていただきました。お土産には、三重大の学生たちが造った純米吟醸酒“三重大學”と船長の内田誠さんが選んだという“三重大学カレー”。機関長の岡田清実さん以下乗組員のみなさんもきりっとした制服姿で大張りきりでした。私も、紅一点の三等航海士小林綾子さんとツーショットを撮ったり、船長の内田さんの帽子と服をお借りして、責任感をもって操船していただいている内田さんの緊張感を一瞬ですが味わいましたよ。

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