- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

「自己嫌悪感が自分の成長につながる法則」カフェグランプリアカデミック大賞おめでとう
~三重大学アカデミックフェア2009にて~

 皆さんPBLというのは何の略だったか、覚えていますか?

 problem-based learningまたはproject-based learningの略でしたね。日本語でいうと問題準拠学習(課題探求型学習)またはプロジェクト達成型学習ということになります。プロジェクト達成型学習の典型的な例は“ロボコン”で、三重大がNHKのコンテストでいい成績をあげたことは08年7月14日のブログで紹介しましたね。

 三重大では医学部で1997年からPBL(問題準拠学習)を始めましたので、もう12年間の実績を積み重ねてきたことになりますね。これは私が中心となって、日本ではかなり早期に導入したものです。少人数の学生からなるグループで、患者さんの実例を模した課題から、学生さん自身が問題点を発見し、自己学習し、グループでディスカッションをして、みんなで問題点を解決します。先生が各グループにつきますが、知識を教えるという役割ではなく、学生さんに議論のやり方や学習の方法を教えます。

 2004年に私が学長になって、三重大の教育目標「感じる力」「考える力」「生きる力」「コミュニケーション力」という4つの力を効果的に身につけていただくために、全学的にPBL的な授業を充実することをお願いしました。だって、普通の講義を聴いているだけでは、この4つの力は身につくとは思えませんからね。

 その結果、いろんなタイプのPBL的な授業が増え、また三重大教育学部教授の奥村晴彦さんたちが開発した“ムードル”と呼ばれるe-learningシステムともあいまって、全学的に浸透し、三重大の教育の“売り”にまでなったと感じています。共通教育で「PBL セミナー」と呼ばれる授業もかなり増えましたし、「法則カフェ」「PBLカフェ」「大学教育カフェ」と呼ばれる、気楽な研究報告会も毎月開催されています。環境ISOを活用した実践的な環境教育もPBL と言っていいでしょう。PBLにさらに磨きをかけ、従来の講義もいっそうの工夫をして、両者を適度なバランスで組み合わせれば、三重大の教育はいっそうすばらしいものになるものと期待しています。

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 そんなことで、私は1月28日の三重大学共通教育「PBLセミナー」の合同発表会と、2月14日の「三重大学アカデミックフェア2009」に顔を出しました。どちらも、PBL教育の一環であり、学生たちによる興味をそそられる発表が次から次へとなされ、時間がたつのを忘れてしまいます。発表が終わったあとも、先生方からのコメントも交えて、学生たちによる活発な討論がなされますが、特に学生の力を感じるのは、この質問に対する受け答えの時ですね。

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 2月15日の中日新聞と伊勢新聞でも紹介されていたように、ブログの読者の皆さんにお伝えしたいすばらしい発表はたくさんあるのですが、ここでは、すべてをお伝えすることはできないので、「三重大学アカデミックフェア2009」(人文学部教授の中川正さんが担当者です)で、 予選を勝ち抜いて決勝戦でカフェグランプリの“アカデミック大賞”を獲得した発表を簡単にご紹介しましょう。

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 これは、教育学部人間発達学課程の今村友美さんの「自己嫌悪感が自分の成長につながる法則」という発表で、参加者全員による投票で大賞に選ばれたんです。

 今村さんは、“自分がいやだ”というような自己嫌悪を感じて、抑うつや自殺につながる場合もありますが、それを自己の成長につながるようにするためにはどうしたらいいか、ということをテーマとして取り上げました。

 結論としては、「自己嫌悪感を体験したら、“いやな自分を変えよう”と取り組んでみましょう!!そして普段から自分を見つめ(自己内省)、自分は何に対してもきっとできるであろうという感覚(特性的自己効力感)をもつことで、自分を変えようという取り組みに向かうことができます!!」というものです。

09021802S.JPG  皆さんは自己嫌悪を感じたことはありますか?フロアからは、自分は感じたことがないという意見もありましたが、この発表が投票で多数を獲得したことは、かなり多くの人が思い当たるということだと思います。

 私はけっこう自己嫌悪を感じることがあったと思います。実行しようと思ってもなかなか実行できない時に、とっても自分がいやになります。でも最近は、だんだんと感じなくなってきました。齢がいくにつれて“鈍感力”の方がまさってくるということですかね。でも、たぶん “特性的自己効力感”を持ち続けることが、精神的な若さを保つ秘けつだと思うので、再度自分を変えるように工夫をし、挑戦をし続けようと思います。

 PBL教育の充実に先導的な役割を果たしていただいた高等教育創造開発センターの先生方、PBLを三重大の看板にまで高めるように努力をしていただいたすべての教員の皆さん、ありがとう。また、一生懸命すばらしい発表をしてくれた学生たちの今後の活躍に、心からエールを送ります。