- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

新年あけましておめでとうございます(その3)
~書きぞめは「女性研究者支援室」~

 84日のブログで、日本の女性研究者の割合はわずかに12.4%、主要34か国中最下位の少なさであること、そして、三重大では国からの支援も得て、女性研究者を増やすことに本気で取り組もうとしていることをご紹介しましたね。この事業の名前は「パールの輝きで、理系女性が三重を元気に」といいます。そして、活動部隊として、女性の若手研究者や大学院生からなる「パール・リーダー」を結成したことをお話しました。

 

 この活動の一つとして「女性研究者支援室」を立ち上げることにしましたが、その部屋に掲げる看板の字を書くように頼まれてしまったというわけです。昨年書いた、三重大の新しい練習船に掲げる「勢水丸」という字、そして、天津師範大学に桜の木を寄贈した時の「桜庭園」という字に引き続いて、3回目の揮毫(きごう:毛筆で字や絵を書くこと)になります。字に全く自信はないのですが、もう気にしないことにしました。

 

 

 

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 さて、先日のブログでもイノベーションの大切さをお話ししましたが、イノベーションを起こすのは、 “人”しかいません。したがって、日本がイノベーション大国になるためには、イノベーションを起こす能力のある人材を発掘し育成することが最も大切なことになります。しかし、日本はたいへんもったいないことに、“人”の半分を占める女性の能力をみすみす無駄にしてきたのですね。なぜ、先進国で日本だけがこのような状態から抜け出せないのか、たいへん残念なことです。これでは、世界のイノベーションの競争にとても勝てません。

 

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 女性研究者を増やす方策のヒントを得るために、昨年の1220日に海外の第一線の女性研究者や学長をお招きして「アジア・コラボ:理系研究者のための国際フォーラム」と題する会議を開催しました。三重大学教員の、小川眞里子さん(人文学部)、武田裕子さん(医学部)、村田真理子さん(医学部)、内田敦子さん(医学部)が世話役を務め、海外からバリバリの女性研究者をお招きしました。

 

中国・上海海洋大学のChengchu Liu博士

中国・清華大学のShuhong Liu博士

タイ・コンケン大学のNapa Limratana博士

インドネシア・スリウィジャヤ大学のBadia Perizade学長

マレーシア・プトラマレーシア大学のNor Mariah Adam博士

 

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 海外の研究者は、自分の体験から、特に若い女性の研究者や学生に対して、たいへん有益な助言を与えていただきました。そして、フロアからもたくさんの質問が出され、活発な意見交換がなされました。私も、学長として具体的に何をすればいいと考えるかという質問をさせていただきました。一つは保育所の整備などの女性研究者の支援、もう一つは、特に日本ではある程度女性研究者の比率が高まるまで、女性を積極的に採用する行動をとること(ポジティブアクション)が必要であるという意見がでました。

 

 学長としてはこの2つの実現に向けて努力をすることを約束しました。ただし、これは女性のハンディキャップをカバーするということであり、研究者として能力のない女性を増やすという意味ではありません。フロアから「採用に値する研究者としての条件は何か?」という質問が出たので、私は、「非常に単純化して言うと、男性も女性も研究資金を自分で獲得できる人材である。」とお答えしました。

 

 今回の会議には、女性ばかりでなく男性の若手研究者や学生にもたくさん参加していただき、ポスターセッションでは、それぞれ自分で行っている研究を発表していただきました。男女共同参画を進める活動は、女性だけが集まって議論していても男性との溝が深まるだけで解決にはつながりません。やはり、男性が参加することが不可欠であり、この点でもたいへん良かったと思います。

 

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 パール・リーダーの皆さんと記念撮影。女性研究者を増やすためには、そもそも小・中・高校の生徒さんに研究者に興味をもっていただかないと始まらないので、まず、生徒たちを動機づける役目である彼女たちの活躍に大いに期待したいと思います。