- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

新年あけましておめでとうございます(その2)
~大不況の時こそ「地域イノベーション学研究科」に大きな期待~

 1月1日の日経新聞の1面は、「危機がひらく未来へ」「トヨタ、太陽電池車で挑む」という大見出しで、非常時の今こそ新しい価値観(サバイバビリティー)を実現するための技術開発が大切であることを主張しています。つまり、苦しい時こそイノベーションに投資を続けられるかどうかで国の将来が決まるということでしょう。私も、まったくそう思います。

 特に、日本全国の各地域からイノベーションの芽がどんどんと出てくるようにしないといけないと思います。地域にある大学として、三重大では明確なメッセージ性のあるコンセプトでもって、地域発のイノベーションの創出に貢献しようと、この4月から「地域イノベーション学研究科」というまったく新しい大学院(博士前期課程および後期課程)を開設することにしました。 (https://www.mie-u.ac.jp/innovation/)

 従来のわが国の大学院は、研究者の育成が中心でした。しかし、この「地域イノベーション学研究科」は、「研究開発能力」だけではなく、「プロジェクト・マネジメント(PM)能力」を同時に育成しようとするものです。PMの指導のために、新たに企業の人材を教員として採用します。さらに、「グローバル化に対応した国際感覚」も身につけて欲しいと思っています。ずいぶんと欲張りな大学院ですね。でも、地域からイノベーションを起こそうと思えば、この3つの能力はすべて身につけておく必要があります。

 今、わが国の企業が、大学院の博士課程を修了した学生をあまり採用しようとしないことが問題になっています。企業にとって、狭い範囲の研究しかできない人材は、かえって使いにくいということがあるのでしょう。私どもは、企業が必要としない人材を無理やり採用して欲しいというのではなく、自らを変えて企業や社会が欲しがる人材を育成しようとしているのです。「地域イノベーション学研究科」では、大学の先生の興味本位の研究テーマというよりも、地域の企業が解決したい問題点そのものを研究テーマとし、また、企業の研究者といっしょに、場合によっては企業の研究室において実践的に指導することも考えています。

 対象は、若い学生さんとともに、社会人も対象としています。特に、地域の企業の幹部社員の方々にとって、博士号を持っていることは国際的なビジネスを展開する上でもとっても有利になるんですね。また、「先端融合工学ユニット」「総合バイオサイエンスユニット」という理系的な名称の二つのユニットで始めますが、特定の学部の上に積み上げた従来型の大学院ではなく、さまざまな分野の教員や学生から構成される「独立大学院」であり、また、文系の教員や学生にも加わっていただく「文理融合大学院」でもあります。工業系だけではなく、農業・林業・漁業などの第一次産業のイノベーションも目指します。近い将来、できれば文系的なユニットも加えて拡大したいと思っています。

 12月24日に文科省から正式に「地域イノベーション学研究科」を認可するという通知をいただき、翌25日記者会見を行いました。意気込んで記者会見を行ったのですが、集まった記者は、伊勢新聞さん、読売新聞さん、中日新聞さんの3社だけ。3社の記者さんには大感謝です。

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 実は中日新聞さんには、すでに21日に独自取材により「地域イノベーション学研究科」を大きく取り上げていただいていたのです。中日新聞の記者さんに、「あれ、どうして来たの?」とお聞きしたら、21日は別の担当の記者が別の取材源から取材した記事なので、三重県の教育担当として取材に来たとおっしゃっていました。ありがたい話ですね。しかも、私のブログをきちんと読んでおられるということなので感激!「学長室へ来た時のお土産は?」という質問に「トイレットペーパー」という答えが即座に返ってきたので“学長ブログ検定試験”は○です。

 でも、次の日の中日新聞には記事は載っていませんでした。やはり、2回連続して同じ記事を載せることは難しいですよね。教育担当の記者さん、これに懲りずにまた来てくださいね。別のネタを提供しますよ。

 私が詠んだお正月の3句です。(必ずしも季語が入っていませんが)

初春の夢が膨らむイノベーション」


「大不況イノベーションで吹っ飛ばせ」


「地域から世界を目指すイノベーション」