- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

初めての首相官邸で河村官房長官に陳情
~国立大学病院の危機~

 12月3日(水)は10時半から、東大の近くにある国立大学病院長会議の事務局で、千葉大、東大、名大、東京医科歯科大、筑波大の病院長のみなさんと、それから、テレビ会議で北大、島根大の病院長さんが加わってミーティング。国立大学病院の経営危機について、国会議員さんや関係省庁にお願いする要望書の案を検討しました。私は、国立大学長の集まりである国立大学協会の“病院経営小委員会”の委員長なのですが、病院長会議と連携をとる目的で、このミーティングに出席したのです。

 42ある国立大学病院のうち約6割の病院で収支差額が赤字となり、今後さらに赤字の病院が増える見込みであること。その原因は、大学病院の医療従事者が経営努力をしていないからではなく、患者数や手術数を増やして頑張っているのにも関わらず、大学病院に対する交付金の大幅な削減(約50%)のためであること。大学病院は地域医療の最後の砦として、地域の病院からの紹介患者さんなど、難しい治療や手術を数多く引き受け、地域医療にかけがえのない役目を果たしているので、大学病院の経営が行きづまれば、地域医療の崩壊がいっそう進むと考えられること。

 そして、病院への交付金の激しい削減のルールである“経営改善係数”の撤廃、大学病院の教育、研究、高度医療、地域医療の最後の砦としての機能を担うために必要な財政支援、第二期中期計画期間(平成22~27年度)において大学病院がその使命を果たしうる交付金の算定、地域医療の最後の砦にふさわしい診療報酬上の評価、の4点を要望することになりました。

 さっそく、その日の午後、できたての要望書を持って、“大学病院を考える議員連盟”会長の河村建夫内閣官房長官に陳情にいくことになりました。千葉大の病院長の河野陽一さん、名大病院長の松尾清一さん、東京医科歯科大病院長の坂本徹さんたちと、河村大臣秘書の山崎さんと衆議院会館で待ち合わせて、いざ首相官邸へ。厳重なチェックのあと官房長官室へ案内され、たいへんお忙しい河村建夫さんとお会いすることができました。

08120501.jpg   08120502.jpg  

 河野さんから要望書の内容について説明していただき、医科歯科大の坂本さんからは、特に、国立病院の医師に比べて大学病院の医師の給与が低すぎることを訴えていただきました。私も、大学病院の機能低下により、地域医療の崩壊と共に、我が国の医学・医療の学術の国際競争力が低下していること、そのために大学病院への交付金の確保が必要であること、しかし、病院を救おうと思えば、高等教育予算全体は1%削減され続けているので、病院以外の部分の予算がシーソーゲームのように減ることになり、医学・医療以外の領域の学術の国際競争力の低下が懸念されることを、追加させていただきました。

 官房長官室から出て、出口の近くへいくと、突然見知らぬ人から声をかけられました。実は共同通信、読売新聞、そしてNHKの記者さんたちでした。首相官邸の訪問者にだれ彼となく、声をかけているのですかね。よく見るとNHKの記者さんは以前に取材を受けた方でした。誰に会いにいったのかと尋ねられたので、これ幸いと正直に河村官房長官ですとお答えし、国立大学病院の経営が危機的状況であるので、なんとかしてほしいことをお願いしてきた旨をお話しました。運悪く余分の要望書がなかったので、後でお送りすることをお約束して、お別れしました。

 ブログの読者の皆さんには、その要望書を記者さんよりも一足早くお見せいたしましょう。(リンク

 首相官邸に入ったのは、全員初めてということで、帰り際に入口のところで記念撮影をしました。大学病院問題が良い方向で解決されるのを祈りつつ。

08120503.jpg   08120504.jpg   08120505.jpg