- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

北京オリンピックに思う
~日本という国の凋落をどうすれば食い止められるのか?~

 8月24日、中部国際空港に向かう電車の中で、このブログを書いています。

marathon3.jpg  8月8日から開催されていた北京オリンピックは8月24日に終了日を迎えました。開催までには聖火リレーの際の混乱などもありましたが、競技が始まってからは、すっかりオリンピック一色になってしまいました。

 このオリンピックに対しては、ブログの読者の皆さんもいろいろな思いや感想をお持ちになったと思います。中国による完璧なまでの大会運営、そして、圧倒的な中国のメダルの獲得。それに対して、個々の日本の選手たちはもちろん頑張ったのですが、全体としては日本の弱体化を感じさせられる結果に終わったのではないでしょうか?

 スポーツの成績は、必ずしもその国の力とは一致しないと思いますし、また、人口の多い大国がたくさんメダルをとるのは当たり前なので、必ずしも悲観することはないと思うのですが、日本の一人当たりの国民総生産(GDP)の順位がどんどん低下して、今世界で20位以下になってしまったと聞くと、やはり日本全体の凋落を反映しているのかなと、少し暗い気持ちになりますね。

 さて、私は今日からアメリカに出張です。三重県の方々といっしょに、カリフォルニア州のロサンゼルスに産学官連携の国際連携について交渉にいきます。また、三重大の工学部教授の平井淳之さんがアメリカの会社と共同研究しているメカトロニクス・ロボティクスにもとづいたメディカル・オートメーションの研究会に参加をします。今、ブラジルを訪問している三重県知事の野呂さんとロスで落ち合うことになっています。

marathon4.jpg   実は、その出発のぎりぎりまで、自宅で北京オリンピックの男子マラソンをテレビで見ていたのですが、ケニアのワンジル選手が見事に優勝しましたね。ワンジル選手は、日本の仙台育英高校に留学し、トヨタ自動車で育った選手だったそうなので、日本も金メダルに貢献していることになりますね。

  このマラソンを見ていて、大学関係者として強く意識をしたのは、北京大学と清華大学という、中国でもっとも優れた大学の構内をマラソンコースにしていることでした。これは、中国が知識社会においても世界トップクラスであるということを示そうとする、憎いまでの演出と感じると同時に、それだけ中国政府が大学を重視していることを示しているものと思いました。 marathon5.jpg

  それに比べて、日本の高等教育の国の予算は対GDP比当たりでは、先進国の2分の1と最低であり、おまけに予算を削減をしているようでは日本の将来の成長は望めませんね。日本の経済成長が低いのは、中小企業や非製造業の生産性が低いことが大きな原因と言われており、グローバル社会が進む中で日本の凋落を食い止めるためには、なんとか地域の企業や産業にイノベーションを起こしてもらって、世界とビジネスができるように活性化しないといけません。そのためには大学の予算を削るのではなく、日本全国に配置されている地方大学の機能を高めて、地域における産学官連携と国際化にもっと投資をする必要があります。私は、たぶん、これしか日本の凋落を食い止める方法はないのではないかと感じています。

(写真はNHKの放送番組より)