- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

「起業家」とは夢の実現に向かって行動できる人
~共通教育「アントレプレナー論」を歩き独自取材~

   今年一番の暑さとなった7月24日の午後、会議の合間をぬって共通教育「アントレプレナー論」の授業の最終日に顔を出しました。

   「アントレプレナー(entrepreneur)」といっても初めてお聞きになる方々がいるかもしれませんね。もともとはフランス語で「起業家」という意味です。大航海時代に生まれた言葉で、命をかけて世界をかけめぐり事業を成し遂げる勇敢な人をさしていたようです。

   この授業は教育学部教授の松岡守さんが、「全学的な知的財産プログラムの創出」という文部科学省から支援をいただいている教育改革の取り組みの一環として始めた授業で、学生さんに「起業家マインド」を育てようとするものです。でも「起業家マインド」ってどんなマインドなのでしょうか?それは、自らの夢や目標を実現するための創造力、問題解決能力、自立心、チャレンジ精神などからなりますね。

kigyouka_04.jpg    三重大学では、このようなマインドを育てるためには、専門課程を修了してからではなく、できるだけ早い、また広い機会を与えることが大切と考え、共通教育で行っています。教育学部教授の山根栄次さんは小・中学生の起業家教育に挑戦しているんですよ。この授業を担当しているのは武田経営研究所の武田秀一さんで、授業の内容としては武田さんによる創業に関する講義や、民間企業の創業者の方々のお話、そして最終日には学生たちが起業プランを発表します。

kigyouka_01.jpg    この日は学生たちが一生懸命考えた10個の起業プランが発表されました。武田さんの司会のもと、松岡さん、山根さん、それから津市の職員のかたや、ベンチャー支援企業のかたにも加わっていただき、ディスカッションが行われました。そして、最後にみんなで投票をして、優秀なプランを2つ選びました。

kigyouka_05.jpg    今回選ばれたのは「A Study Community」と「夜の学食」という二つの起業プランです。

   受験や試験などへの勉強は、良く知っている人に教えてもらうことと、自分自身で学習することの両方がないと身につかないものです。でも、塾では授業が中心なので受け身になってしまいますし、かといって図書館では静かにしないといけないので、人に教えてもらうことができませんね。「A Study Community」は、こんなところに目をつけて、自由にコミュニケーションができる自習スペースを提供することによって、塾や図書館などとは違った学習支援サービスを提供します。ここでは、大学生が高校生を教え、高校生が中学生を教えることや、質問表を使って教え合うシステムを導入し、自ら学習する姿勢や仲間と教え合える姿勢を育てます。営業時間は16~22時で、昼は習い事や会議として使われているスペースを活用し、塾や家庭教師とは差別化した割安の会員制サービスを提供します。
 
   「夜の学食」は一人暮らしの学生さんに健康的でおいしい夜ごはんを提供したいという発想で始まりました。大学の食堂が夜の7時に閉店することに目をつけ、その後を借りて食事の提供と、栄養士さんによる健康的な食事の作り方の指導、さらに、学生さんの学習スペースを提供します。“ファミレス”では勉強していると追い出されるかもしれませんが、ここでは追い出される心配はありません。

   両方とも、ビジネスモデルを回さないといけないので、収益、費用、そして利益などの見込みが計算されていました。この2つのプランについては、両方抱き合わせて一つのプランにしてもいいかもしれませんね。

   武田さんの総評では、昨年に比べてレベルが上がっているとのことでした。そして、起業において大切なことは、まずチャレンジするということ。そして、今回の授業が、何らかの成果や具体的な動きに結び付けばいいなと思っていることでした。

   実は、昨年この授業を受けた学生さんがさっそく今年の8月からベンチャーを立ち上げようとしているとのことです。学生さんの発表は決して遊びや夢物語ではないんですね。「起業家」とは、まさに夢の実現に向かって行動できる人ということだと思います。