- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

明確な目標、一芸に秀でた能力、人知れぬ努力、そして人とひとの支え合い
~成果の裏には表に出てこない積み重ねがある~

   7月10日のお昼休みに、課外活動で優秀な成績を収めた学生さんに学長から表彰をさせていただきました。

   今回の対象者は、日本学生女子ハーフマラソンで優勝した教育学部4年生の水口侑子さんと、NHK大学ロボコン2008で技術賞(3位に当たるとのことです)を受賞した工学部のロボコンクラブM3RC(エムキューブ・アール・シー)です。学長からは表彰状と記念品を贈呈し、後で彼らにインタビューをしました。 commend1-2jpg.jpg commend2.jpg commennd3.jpg    水口さんは岐阜県立斐田(ひだ)高校時代には中距離で活躍しました。三重大に入ってからは長距離で全国を目指そうとしましたが、女子部員がわずかに3人しかいないという練習環境の中で、また、故障や体調を崩したために成績が伸び悩んでいました。転機は、昨年8月に commennd4.jpg 実業団の20日間の合宿に参加したことで、そこで多くのことを学びました。そして、筋力不足を実感し、ベンチプレスや腹筋など筋トレに打ち込みました。ベンチプレスは上半身の筋肉を鍛えるトレーニングですが、どうして必要なのかとお聞きすると、強い腕の振りが走りには欠かせないとのことでした。

    上位入賞選手に国立大学の学生さんはほとんどいないのですが、やはり練習と勉学との両立は正直たいへんとのことです。目標は何ですかとお聞きすると、卒業後、実業団に入ってマラソンでオリンピックに出場することです、と明確な答えが返ってきました。これだけ明確で大きな目標をきっぱりと言える人は少ないのではないかと思いました。

   M3RCは、まずどうしてこのような名前になったのかというと、ミエダイのメカニカルエンジニアリング(機械工学科)のメカトロニクス研究室が支援をしているロボットクラブの略ということです。指導教員は総合情報処理センター准教授の杉浦徳宏さんで、学生は工学部の各学科にわたり、主力の学生は2年生です。結成は2002年で歴史は浅いのですが、最初の2年間は一回戦で敗退、3回目の挑戦の2006年には特別賞受賞、2007年にはベスト4プラス特別賞2件を受賞しています。

commend6.JPG    なぜ、短期間に高成績を達成できるまでに成長したのか、部員の皆さんと指導教員の杉浦さんに聞いてみました。

   まず、一芸に秀でた学生の存在が大きいとの答えが返ってきました。一から手探りで始めるにあたって、高校の時からロボコンの経験がある工業高校出身の学生さんの存在が大きかったとのことです。また、 commennd5.jpg AO入試による一芸に秀でた学生さんの存在も大きいとのことでした。最近日本型のAO入試の効果を疑問視する報道がありましたが、三重大の場合はうまく機能しているようです。

     学生たちは夜も寝ずに頑張ることもしばしば。秋に競技テーマが発表されてから6月の大会まで、マラソンと同じように長丁場のつらい思いをするとのことです。1回戦で負けたら悔しさだけが残るので、それをバネにして次の年の優勝を目指して再度挑戦。表舞台に出るのは3人だけですが、たくさんの裏方の学生さんのがんばりとチームワークがあって初めて達成できるとのことです。

   今回のハーフマラソンもロボコンも、その成績の裏には、明確な目標、一芸に秀でた能力、人知れぬ努力、人とひととの支え合いがあったことがわかります。どんなことであれ、一定の成果を残すということの裏には、表に出てこないたいへんな積み重ねがあるのですね。このような経験は、学生たちの将来の人生に何事にも代えがたい大きな自信を与えることでしょう。