- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

学長の本業とは?

   さて、学長ブログを始めて約半年が経ちましたが、このあたりで私の専門をご紹介しましょう。私の専門は臨床医学で、今、地域の医師不足で問題になっている産婦人科です。平成16年に学長に就任するまでは、三重大病院で産婦人科の教授として診療を続けてきました。そして、私の学術面での研究テーマは、「妊娠糖尿病」です。

   私は、学長になってからは診療を一切やめています。学術活動についても、日本糖尿病学会の「妊娠糖尿病の定義・スクリーニング・診断基準の再評価に関する調査研究委員会」ついては、学長になる前から委員長をお引き受けしていたので、今回その報告書をまとめさせていただきましたが、それ以外は,学長の職務に差し支えのないように最低限にとどめています。

   さて、皆さんは「妊娠糖尿病」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか?妊娠時に初めて高血糖が見つかった場合を指しますが、糖尿病に至らない程度の軽い高血糖でも、胎児や新生児にいろいろな影響が出てくるのです。たとえば、巨大児が生まれたり新生児が低血糖症をおこしたりします。血糖値が高くなればなるほど悪影響も大きくなり、先天異常児が生まれたり、胎児がお腹の中で死んだりすることもあります。妊婦さんの約2~3%と、けっこうたくさん患者さんがいらっしゃるので重要な病気なのですが、あまり、一般の方々はご存じないようです。このブログをお読みになった方は、この機会にぜひ覚えてください。

   ところで“学長の「本業」は何ですか?”と聞かれた時に、私はいったいどう答えたらいいのでしょうか?「妊娠糖尿病の研究者です。」とお答えするのが果たして良いのかどうか、皆さんはどう思われますか?

   あるノーベル賞候補にもあがった高名な研究者の方が大きな総合大学の学長をお引き受けになった時に、実験を続けることができることを条件にされたとお聞きしています。でも、特に法人化後の総合大学では、研究と学長職の両立はとても難しく、学長はやはり大学の「経営」に専念するべきであろうというのが、私の経験からの感想です。

   国立大学法人では、学長職と理事長職が分かれておらず、学長が二つの職を兼ねる形になっています。経営は経営の専門家にまかせた方が良いという意見もありますが、どちらがいいシステムか結論は出ていないと思います。私は、学者であっても、センスがあれば経営者として十分やっていけるのではないかと思っています。と言いますのは、少し経営の勉強をしてみると、ある面では学者や医者の行動原理と経営者の行動原理は、けっこう共通部分があるのではないかと感じるからです。

   実は、4月7日の中部経済新聞に「メタボ健診と企業経営」という私のコラムが載りました。そこには、「メタボ」治療と企業経営の共通点を書かせていただきました。

   4月4日に三重大学と包括連携協定を締結している百五銀行さんの研修会で、大学病院の経営についてお話をさせていただいたのですが、講演後に頭取の前田さんが“豊田学長はまるで経営者だ”とコメントされました。私には今どきの「学長」という職への最高の褒め言葉であると感じました。

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