- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

高等教育へのいっそうの投資を
~国立大学協会総会にて~

   3月5日は国立大学協会(国大協)の総会が東京の学士会館で開催され、出席しました。

   国大協は国立大学や大学共同利用機関の集まりなのですが、最初は、1950年(昭和25年)に新制大学制度が発足したことを契機にして、各大学相互の連絡・協力の強化を図り、連携して対処する必要性から、「国立大学協会」が設立されました。2004年の国立大学法人化の際にいったん解散し、新たに「社団法人国立大学協会」として再スタートを切りました。現在86国立大学法人と4大学共同利用機関法人からなります。

kokudaikyo1-3.JPG   さて、今回の総会では会長の改選がありましたが、中央において機動的な活動をしていただける方で、かつ、地方大学の立場にも理解を示していただける方に会長になっていただきたいという、総会での意向を尊重しつつ、理事会において、東京大学の小宮山宏さんが再選されました。

 

小宮山宏さんの会長再選のご挨拶では、下の3つの基本方針をお話になりました。

  (1)国立大学はナショナルセンター、リージョナルセンターとして、特色ある取り組みを行いつつ、わが国の高等教育の主翼を担っていく覚悟である。
 (2)社会からの理解度を深めるため、国立大学の取り組みの「見える化」を図る必要がある。
 (3)新しい高等教育を支えるための財政基盤強化を図るため、
      ①自助努力をするための制度の改正(税制改正など)を要望。
      ②公財政支出5兆円を目指す。

   公財政支出5兆円というのは、中央教育審議会の教育振興基本計画特別部会が、慶應義塾塾長の安西祐一郎さん他3名の連名で2月8日に出された「教育振興基本計画の在り方について- 「大学教育の転換と革新」を可能とするために-」とほぼ同様の主張です。

   アメリカの大学と日本の大学の間には、教育や研究レベルに圧倒的な差がありますが、実は、わが国の学生一人あたりの高等教育費はアメリカの約2分の1しかありません。安西さんたちは、現在の高等教育への公財政支出2.6兆円(私費負担も含めると6.4兆円)を2025年には5.5兆円(私費負担も含めると11.2兆円)以上にするべきであると主張しています。

kokudaikyo2-1.JPG    政府は、日本の大学の国際競争力の向上を目指すといいながら、「選択と集中」と称して大学間の格差拡大政策をとるだけで、全体として高等教育予算を削減しています。これでは、アメリカなど主要先進国との差はますます拡大するし、中国やインドなどの新興国に圧倒されてしまうことは目に見えています。

   資源の乏しいわが国では、人材の育成や科学技術創造立国をめざすしか生きる道はないと思いますが、先進国に比較して、あまりにも少ない投資額では、道路は整備されたとしても、日本の将来はない感じがいたします。