- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

小学校の先生方の熱気あふれる改革への取り組み
~附属小学校公開研究会にて~

kenkyu1-1.JPG    今、初等中等教育の国際的な学力調査(PISA)での、日本の順位の低下が問題となり、それが「ゆとり教育」路線の誤りとされ、教科の授業時間を増やすことが決められたことは、皆さんもご存知ですね。そのような状況の中、2月9日(土)に、恒例の三重大学教育学部附属小学校の公開研究会が開かれました。今回で第34回目ということで、ずいぶんと歴史をつみかさねてきたことがわかります。

    午前中は、附属の先生方の実際の授業を自由に見学できる「公開授業」があり、次に全体会として、研究発表(全体提案)と子どもたちの合唱、午後は、教科別の研究討議、そして、詩人の谷川俊太郎さんとその息子さんで音楽家の谷川賢作kenkyu2-1.JPGさんによる公演「詩と朗読と音楽のつながるときに」がありました。私は、当日の朝、出張先の大阪から津市にある附属小学校に立ち寄り、「全体会」に出席し、その後、所用のために名古屋へ向かいました。

   その日は雪が舞う寒い日でしたが、全体会の会場の体育館に入ると、1000人は超えると思われる小学校の先生がたで埋め尽くされ、暖房が効いていないにもかかわらず、熱気があふれていました。今回の公開研究会の研究委員長で、音楽を担当している伊東 玲先生が「子どもがつながることでさらに確かになる学び~探究と対話による授業の再構築を目指して~」と題する全体提案をされました。

kenkyu3-1.JPG    伊東先生はもちまえのユーモアあふれる話しぶりで、「探究」つまり、問題解決学習における自発的な問題意識や自主的な解決過程と、「対話」つまり、子どもたちを1対1の人間関係からしっかりと結びつけること、の2つによって「子どもがつながる」ことが、学びの理想であることを説明されました。

   これは、まさに、三重大学が大学生に対して推し進めている「PBL教育」(problem-based learning, project-based learning)と、同じ原理ですね。

   PISAの学力調査は問題解決能力を測るテストということですが、教科の授業時間を週1時間増したくらいでは、日本の順位の低下をとても回復できないように感じます。やはり、根本的に問題解決能力をはぐくむような授業に変えないとだめなのではないでしょうか? 

kenkyu4-1.JPG    実は、附属小学校は、以前から問題解決能力をはぐくむ授業の工夫に試行錯誤で取り組んできました。問題解決能力をはぐくむ授業で教育改革をしたフィンランドが、PISAの成績順位でトップになったことから、多くの先生方は、附属小学校の方向性が間違っていなかったことを確信されたと思います。

   ただ、フィンランドは20人学級ですが、わが国では40人学級なので、効果的な問題解決型授業はたいへん困難であると思います。単に教科の授業時間を増やすというような付け焼刃的な対策ではなく、先生の数をもっと増やして20人学級を実現し、効果的な問題解決型授業を実現することが、わが国の初等中等教育の国際競争力向上のためには必要でしょう。

   全体提案のあとの子どもたちの合唱もすばらしかったですよ。6年生の3つのクラスの子どもたちと、音楽クラブの子どもたちが、谷川俊太郎さんの作詞された、とっても難しい歌を合唱しました。なお、音楽クラブのみなさんは、NHKの合唱コンクールの全国大会に出場しただけあって洗練されていましたね。