- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

若い人たちにも伝えたいJRの壮絶な改革
~ところで三重県人は経営者に適している?~

JR1-1.JPG    1月23日三重大の講堂小ホールで、(株)三重ティーエルオーと三重大学の共催で、「産学官新春講演・交流会」が開かれました。企業(産)、大学(学)、自治体(官)の皆さんの交流をさかんにするために、このような会を毎年数回催しています。

   まず、電池の研究で世界をリードする三重大工学部長の武田保雄さんが、「高性能電池への期待・・・最新リチウム電池事情」というお話をされました。武田さんは、この4月に発足する四日市の「高度部材イノベーション・センター」でも活動します。

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次にJR東海社長の松本正之さんが「JR東海の20年」というテーマでお話をされました。さすがにビッグ・ネームの来場とあって超満席となり、また、三重県知事の野呂昭彦さんが、お忙しい公務の合間をぬって三重大までお越しになり挨拶をされました。松本さんは、経営破たんに陥っていた国鉄の分割民営化がいかになされたか、また、その後のJR東海の経営、技術革新、安全性向上などについてお話になりました。大改革の修羅場におられた松本さんのお話は説得力があり、改革を成功させるにはリーダーの強い信念とその支持者の存在、そして 適切な戦略と薄氷を渡れる「運」があることがわかりました。

   また、将来の計画としては、ドイツの1cmしか浮かない常電導のリニアに比べて、JRのリニアは超電導で10cm浮くので高性能の実用化が期待でき、東京と中部圏を結ぶリニア新幹線を自力で2025年には開業したいとのことでした。三重大へ来られる前にも新聞社のインタビューに応じられ、その記事が25日の新聞に載っていました。

松本さんのキーワード
①鉄道は「長いトレンド」と「日々の業務」の組み合わせで取り組む事業。
②内部から変革することは極めて難しい。しかし、必要。成功した企業は生き返る。
③組織における「人」というのは、環境、価値観、教育等により、常に劇的に変化しうる可能性を持つ。
④人は嫌なこと、困難なことは本能的に避ける。しかし、課題が不可避であると認識した時、それが信念に高まった時、解決する力を持つ。
⑤経営責任をとることができるのは経営者のみ。そして「とらなければならない」のも経営者
⑥その意味で 「企業は人なり」。このことは永久に不変
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   国鉄改革の詳細を知りたい人は、JR東海会長の葛西敬之さんが書かれた「国鉄改革の真実」をぜひ読んでください。壮絶な改革の内幕が書かれています。国鉄改革は「国鉄」を知らない若い人たちにも、伝えていきたい歴史であると思いました。

   ちなみに、松本さんは三重県のご出身で伊勢高・名大のご卒業です。そういえば、先日ご紹介したデンソー特別顧問の石丸さんも、トヨタの奥田さんも、イオンの岡田さんも、岡三の加藤さんも三重県出身ですね。三重県人はどちらかというとおっとりしている人が多く、一見商売人に適しているという感じは受けないのですが、昔から「伊勢商人」は有名ですし、今でも成功したかたがけっこうおられるのは、不思議な感じがします。むしろ、がつがつしない三重県人がリーダーに必要な信念を持てば、バランス感覚をもった優れた経営者になりうるということかもしれませんね?