- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

大学ランキングの落とし穴
~地方国立大学の挑戦(その2)~

   今日は大学ランキングのお話しをしましょう。大学人の中には、「ランキングなんて本当の大学の価値を反映するものではないので無意味だ。」と思っている人もいると思いますが、最近、これだけ大学のランキング本が出版されるようになると、無視もできません。

   政府の教育再生会議が昨年6月に出した第2次報告書には、大学が国際競争力を高める必要があり、その数値目標として「定評のある国際比較において、上位30校に少なくとも5校は入ることを目指す。」と書いてあります。国レベルの政策にも、大学ランキングが取り上げられるようになったんですね。

   わが国の大学ランキングが上がることは結構なことと思います。ただし、ランキングにはたくさんの落とし穴があるので、それに落ちないように注意しなければいけません。

   最初の落とし穴ですが、国の予算はあまり増えませんから、もし、上位校のランキングを上げようと思うと、上位校にだけ予算を集中させて、それ以外の大学の予算を削ることになりかねません。つまり「選択と集中」です。これでは、一部の大学のランキングは上がったとしても、それ以外の大学は下がる可能性があります。これで、果たしてわが国全体の国際競争力が上がるのでしょうか?

   2番目の落とし穴ですが、しばらく前に、フランスのリヨン大学の先生にお会いしたら、今後は、リヨン市にある大学を連合して、論文をすべてリヨン大学として発表する予定とのことでした。こうすれば、確かにランキングは上がるかもしれません。しかし、果たしてこれで国全体の国際競争力が上がったことになるんでしょうか?

   3番目の落とし穴は、大学には教育、研究、地域貢献という3つの目的があり、一つだけで大学の価値を測ることはできないことです。地方大学の地域貢献という目的は、上位校の国際ランキングの上昇よりも、国民にとってもっと大切かもしれません。アメリカの医学部のランキングを見ると、研究の上位50校とともに、プライマリーケア(第一線の医療)という切り口でも、上位50校が公表されています。一つの指標だけでなく多面的に評価することが大切なんですね。

   実は、「研究費あたりの国際的論文数」を計算すると、旧帝大よりも地方大学の方が高い値を示します。仮に、このような「研究効率」を指標に加えれば、地方大学の方がランキングが上になるかも知れませんよ。

   このようにランキングは、落とし穴がいっぱいあるので、それに落ちないように細心の注意をする必要があります。いったんランキングが公表されると、その順位だけが注釈なしで一人歩きしてしまう落とし穴にも注意しないといけませんね。

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