- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

将棋の直観力と研究者のセレンディピティー

P2007_1030_182720.jpg  10月30日、伊勢市の神宮会館で開かれた第20期竜王戦7番勝負第2局(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)の前夜祭に招待されました。初めての伊勢神宮奉納のタイトル戦とのことで、現在の将棋界を背負って立つ渡辺明竜王と佐藤康光二冠の対局であり、また、米長邦雄日本将棋連盟会長、立会人として谷川浩司九段も出席されるとのことで、伊勢市長をはじめ地域の主だった方々や将棋界の方々が大勢参加されました。

 さて、このような場に国立大学の学長が顔を出したということで、地元の方もちょっとびっくりされたようでした。関係者の方々や伊勢市長さんの挨拶の後、私の乾杯の挨拶となり、なぜ、こんな所に学長が出現したのかという理由を述べることにしました。

 私が出現したのは、将棋に凝っているからではなく、地域に根ざす大学として、餅屋の不祥事で意気消沈している伊勢市のことが大学としても心配であること、最近、棋士の方々が技術的な本以外に「決断力」、「集中力」、「構想力」、「不運のすすめ」といった、将棋のことを知らない方々にも参考になる教育的な本を出しておられること、勝負手を思いつく「直観力」が、研究者が発見をする時のひらめき(むつかしい言葉で「セレンディピティー」ともいう)と共通していると思われること、理化学研究所が将棋の直観力の脳科学的解明のために将棋連盟と共同研究を始めたこと、地方国立大学は予算を削られ経営的にも厳しくなりつつあり、経営の立て直しを図っている将棋連盟と同類相憐れむというという気持ちで参上したこと、渡辺竜王や米長会長がブログで情報を発信しておられ、私も「学長ブログ」を始めさせていただいたこと、などを述べました。挨拶の後、米長邦雄会長から将棋連盟はすでに黒字になったこと、どのようにして黒字化したかなど貴重なアドバイスをいただきました。

 さて、会場で私に挨拶をされた方の中に、神戸大学大学院理学研究科で数学を専攻されている方がおられ、お話をすると、実は三重大学教育学部の卒業生で地元が伊勢市ということがわかりました。私の、「数学の発見と将棋の直観力も同じではないか?」、「将棋も数学も閉じられた空間の中の無限の世界ではないか?」という問いかけに彼もうなずき、これから数学的に将棋を研究してみたいとのことでした。

 三重大卒の将棋数学者がんばれ!!