教養教育機構長あいさつ

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2014年4月より三重大学教養教育機構が発足しました。三重大学の全学生を対象として、教養教育を企画し、実施していくための組織です。現在、学内の5つの学部と高等教育創造開発センターから異動した15名の専任教員で構成されていますが、これら教員が中心となり、各学部からの教員も出動して、全学の教養教育を運営していきます。

これまでは、各学部から教員が「共通教育センター」に集まって、そこで全学向けの共通教育(教養教育)を企画し、運営してきました。そこでは数々の新しい試みもなされ、外部から高い評価を受けているものもあります。ただ、運営の中心となる教員はそれぞれの学部の仕事もあり、共通教育だけに専念するというわけにはいきませんでした。また、さまざまな改革の結果、共通教育の内容も多岐に渡り、そのすべてを把握するのが困難になってきました。

2011 年5 月内田淳正学長より教養教育のための新しい組織構築について提案がなされ、これを受けて教養教育検討専門委員会、教養教育カリキュラム等検討委員会で検討がなされました。2013年には教養教育機構設置準備室が設置され、2014年4月から三重大学教養教育機構が発足することになりました。

すでに新しいカリキュラムの理念と大枠は作られています。その詳しい内容を教養教育機構で検討し、2015年4月より新カリキュラムを実施することにしています。詳しい内容は「新教養教育カリキュラムの理念と内容」をご覧ください。

私は最初の学長提案からずっと教養教育の改革に取り組んできました。2013年5月からは教養教育機構設置準備室長も務め、この度、最初の教養教育機構長に指名されました。正直申し上げて、私自身、「『教養』とは何か」「『教養教育』はどうあるべきか」という問にはっきりとした答を持っているわけではありません。一般には広く深い知識を持った人を「教養がある」ということがありますが、果たして「教養」とはそれだけのものなのでしょうか。それは永遠に答の出ない問のようにも思えます。だからこそ、教養教育について常に問題意識を持ち、真剣に考え、議論を続けることのできる組織を作ったということは意義あることだと考えています。

三重大学は教育の基本的目標として、4つの力(感じる力、考える力、コミュニケーション力、生きる力)の育成を掲げています。常に問題意識を持ち、たとえ答は見つからなくても常に考え、人と話し合う姿勢を持つこと、それがいわゆる「教養」にとって不可欠な要素であるのは確かでしょう。そのように考えると「教養」はまさに「生きる力」でもあります。常に変動する世の中にあって、どのような不測の事態が起こってもきちんと対応でき、地域と世界をつなぐことのできる社会人となられるよう少しでもお手伝いができたらと思っています。

三重大学教養教育機構長 井口 靖