- 学長通信 -

三重大学長ブログです。

生活と仕事、女性と男性のバランス

大学教員は研究者としての自覚は十分ですが、教師、教育者としての自覚に乏しい人が少なくないようです。これは大学教員の採用基準が研究業績を重視していること、教育についての評価が難しいことなどに起因しているからでしょう。そのためFD(Faculty Development)のセミナーや講習会が頻回に開催されています。FDとは大学教員の教育能力を高めるための実践的方法のことで、アメリカで始まった頃は教育熱心な大学教員の研究力強化が目的でした。教育と研究のバランスが保たれることにより、大学本来の目的である人財の育成が達成されるはずです。

今世紀はバランス感覚がないと生き残れないでしょう。資源開発と環境との「バランス」、社会の中で個人を活かす「バランス」、経済活動における統制と自由の「バランス」、物の豊かさと心の豊かさの「バランス」、そしてワークライフ「バランス」、さらには女性と男性の「バランス」も含めなければなりません。

仕事と生活を調和させるためには何が必要でしょうか。まずは意識改革でしょう。生活をエンジョイすることが結果的に仕事の効率を上げることを自覚しましょう。家庭やコミュニティーで役割を果たすことが仕事を円滑に進める助けになることに気づきましょう。組織の中で一定の課題をこなすために集中が求められることはあるでしょうが、それはある期間で終わります。その後は家族との時間を持つことは可能でしょう。家族あっての仕事であり、自分であることを認識したいものです。しかし、アメリカのコンサルティング会社が行った調査によれば、男性労働者が89%、女性は87%の割合で、ワークライフバランスの実現について不可能と回答しているとのことです。男女共同参画が進み、生活をエンジョイしていると思われているアメリカ社会においてさえこの数字ですので、これを実現することは生易しいことではなさそうです。

大学は女性が働きやすい職場です。そのことは欧米や東南アジアの諸国で女性教員や職員が多いことで示されています。この点では日本は発展途上国です。公立大学や私立大学での女性教員比率は20%を超えていますが、国立大学では12.0%です。国際的にみても、米国の34.3%、英国の36.7%に比べて低い。博士課程の学生に占める女性比率が高ければ研究者に占める女性比率も高い傾向にあるとのことです。わが国でも博士課程の学生に占める女性比率は近年大きく増加していますが未だ3割以下です。まずは博士課程の女子学生を増やすことに力を注ぎましょう。