- 学長通信 -

三重大学長ブログです。

マネージメント

国立大学が法人化して10年が経過しました。国からの交付金が削減される中、それぞれの大学、特に地域圏の中堅大学が外部資金の導入に懸命の努力を重ね、教育、研究のさらなる充実を図っています。残念なことに、それが国民に十分に伝わっていないためか、学長のリーダーシップを含めた急速な大学改革の必要性が叫ばれていますが。 

大学のマネージメントとは何か? 目的に向かって効率的に動くために、資源を統合調整することでしょう。高い教育、研究の質と健全な経営の質を求めて、そこに勤務する全教職員が効率的、機能的に動くことができ、自らの能力を十二分に発揮するように調整することになります。これは紛れもなく人財育成のマネージメントであり、「人はどうすれば動くかの」への問いかけであり、人をどう学習、成長させるかを考えることで、本来ならば大学の最も得意とするところです。

マネージメントの方法論としていくつかの考え方があります。科学的に管理しようとする考え方、人間関係を基軸とする考え方、個人の意志決定を重視する考え方などです。科学的管理論はまず評価基準を策定し、それに基づいて成功者にはアメとしての成功報酬を、失敗者にはムチとして減給を明確にする考え方で、人の感情を排除し、物質的欲求により能率的に働くことを求めるものです。アメリカ的やり方ですね。現在国が大学に求めてくるマネージメントはこの方法です。

その対極として人間関係を重視する考え方で、集団に対する感情により仕事の能率は大きく変化するとし、マネージメントの中心に人の情緒を置くやり方です。古典的日本方式ですね。

個人の意思決定を重視する方法とは人は極めて情緒的であるが、ある範囲内では合理的判断を下しうるとする考えに基づいたマネージメントです。意志決定が自らを惹きつける要因と自らの犠牲のバランスの基でなされるとしています。現在在籍している大学の教職員は惹きつけ要因が犠牲を上回っていると考えます。惹きつける要因は企業に比べて自由に研究する時間や課題を選択できること、常に若い学生と接することができることでしょうか。しかし、これが逆になると、人は急速に負の情報ばかりを集めるようになり、意欲を失っていきます。急速な大学改革はこの逆状態を作る可能性を秘めていることを認識しておかなければなりません。

人は様々であり、個人の欲求も環境や段階で様々に変化します。普通の生活がしたいと思う生理的欲求に近い段階から自己の可能性を追求したいとの高度な欲求まで多様です。従って人財育成のマネージメントは人をどう捉えるかにより大きく異なることを知りましょう。