- 学長通信 -

三重大学長ブログです。

今年を振り返る

高知県四万十市でこれまでの国内最高気温を更新し41.0℃を記録するなど各地で記録的な猛暑となった今夏でした。一方、東北地方では梅雨明けが遅れ、8月になっても雨の多い日が続きました。1時間に100mmを超える局地的な豪雨(ゲリラ豪雨)により、洪水や土砂崩れの被害が多発し、不安定な大気の状態が竜巻を引き起こし、各地に被害をもたらしたこともこれまでの記憶になかったことでした。少し地球の健康状態が悪かったのかもしれませんが、重症にならないための手当を地球人は考えなければならないのかもしれません。

年末になると今年の十大ニュースなるものが報道機関を中心に発表されるのが恒例です。三重大学での出来事を振り返ってみます。

3月には附属図書館のリニューアルが完成し、既に出来上がっていた環境・情報科学館との連絡路もでき、学生の学習環境や教員の研究環境が大きく改善しました。そしてこの一角が大学のラーニング・コモンズとして機能しています。特に学生からすれば、教育を受けるだけではなく、「自ら学ぶ」ことを実行できます。複数の学生が集まって、電子情報も印刷物も含めた様々な媒介から得られる情報を用いて議論を進めていく学習スタイルを可能にする「場」を提供し、学生の自学自習を支援することになります。

5月には津市出身でオリンピック3連覇の偉業を成し遂げた女子レスリングの吉田沙保里さんに、三重大学で学生たちに語りかけてもらいました。私と教育学部の杉田正明教授との鼎談形式でしたが、彼女の明るく自信に満ち溢れた話に学生たちは感銘を受けました。「今しかできないこと、今できることに全力で取り組む」「チャレンジし、それを継続すればきっと変化がわかる」など名言です。

8月にはアメリカ合衆国のハーバード、インディアナ、カリフォルニアの各大学を訪問し研究の打合せを行い、三重大学国際バイオエンジニアリング教育研究センターの立ち上げを企画しました。その後、ブラジルサンパウロに向かいサンパウロ大学との大学間連携協定を締結することができました。ブラジルには三重大学農学部(現生物資源学部の前身)の卒業生が昭和30―40年代に約20名移民し、現地で成功を収めています。滞在中の一日、ご家族を含めて約60名が南米三重大学同窓会を開催し、われわれ一行を大歓迎してくれました。彼らの今後ますますの活躍を祈っています。(この詳細は学長通信2013年9月に掲載) サンパウロからペルーのリマに移動し、ラ・モリーナ農業大学と連携協定を締結し、今後学生や教員の交流を活発にしたいと思っています。以前は日本とペルーの関係は緊密でしたが、最近は中国や韓国に押されているようですのでこれを機会に昔を取り戻せたら良いですね。

2月よりスマートキャンパス実証事業が本格的にスタートしました。風力発電、太陽光発電、ガスコージェネレーション(ガスで発電すると同時に、廃熱を給湯や空調、蒸気などの形で有効に活用する方法で、クリーンな都市ガスを利用するので環境性に優れているほか、省エネ性にも優れている)での発電、大型蓄電装置、節電機器により効率的なエネルギーマネジメントシステムを作りました。それにより、電力使用の抑制、炭酸ガス排出を約25%減少させることができました。個人の努力を見える化したエコポイント制を導入し、みなさんの活動への興味と積極性を促しています。これらの教職員学生上げての取り組みが評価され、第22回地球環境大賞文部科学大臣賞や第14回中部の未来創造大賞を受賞、さらにはエコ大学総合1位となりました。世界一の環境先進大学へと着々と整備が進んでいます。

11月には「男女がいきいきと働いている企業」として三重県知事表彰を受けました。大学教員での女性の比率は現在15%ですが、毎年増加傾向にあります。職員の比率は63%が女性で、この数には看護師さんも含まれてはいますが、女性がいきいきと活躍する職場であることは事実です。執行部に1名、事務部の課長以上に4名の女性がいるのも頼もしい。

教員による多くの研究業績が発表され、その一部はマスメディアに報じられ注目を集めましたが、一教員による論文のデータ改ざんが発覚して、懲戒処分となったのは残念でした。研究倫理について全ての教員が見つめ直す必要に迫られています。 

「差し引いても 善きことが残る 巳年かな」でしょうか。
千里をかける馬のごとく走り抜く2014年に。