- 学長通信 -

三重大学長ブログです。

入学式

2013年の三重大学入学者は学部生1,470人、大学院生429人、併せて1,899人です。学部は三重県出身者が全体の約40%を占めています。中国、韓国、マレーシアから12人、大学院では8か国から27人の留学生を迎えました。学部学生、大学院生を含めて8,000人以上の学生と約2,000人の教職員、併せて約1万人がこのキャンパスで学業や教育・研究あるいは管理運営に励み、それぞれの責務を果たしています。三重県で最大の組織体であることを自覚してその使命を果たさなければなりません。

今回の学長通信は入学式での私の式辞の要旨を掲載します。

本年10月には伊勢の神宮で式年遷宮が行われるのはご存じのとおりです。年間1,000万人以上の参拝者が訪れると予想されています。パリにあるルーブル博物館への年間入館者が1,000万人と言われていますので、この神宮への興味の高さには驚かされます。式年遷宮の理由はいろいろと言われていますが、世代交代と技術の伝承に大きな意味があり、当時は日本の総合科学技術研究所として機能していたと考えています。建築、調度品、衣装、宝物、薬草などの数多くの技術や知識が若い世代に伝えられたことは勿論、そこには新しい創意工夫も加えられたことでしょう。そして、取り壊された宮の古材は全国の神社に供給利用されたため、技術は広まっていったのではと想像します。電子情報化がなされていなかった時代のICT(情報通信技術)の原型の一つだったのでしょう。三重大学がその発想を受け継ぎ日本はもとより世界に向けて情報を発信しましょう。

「一隅を照らす、是すなわち国の宝なり」との言葉を皆さんに送りたいと思います。天台宗開祖、最澄が人々を幸せへと導くために「一隅を照らす国宝的人材」を養成したいと、熱意をこめて著述したものです。そして「径寸(けいすん)十枚これ国宝に非ず、一隅を照らすこれ則ち国宝なり」と教えます。「径寸」とは金銀財宝のことで、「一隅」とは今あなたのいるその場所のことです。

お金や財宝は国の宝ではなく、家庭や職場など、自分自身が置かれたその場所で、精一杯努力し、明るく光り輝くことのできる人こそ、何物にも変えがたい貴い国の宝である。一人ひとりがそれぞれの持ち場で全力を尽くすことによって、社会全体が明るく照らされていく。「人の心の痛みがわかる人」「人の喜びが素直に喜べる人」「人に対して優しさや思いやりがもてる心豊かな人」こそ国の宝であると教え、教育の大切さを説きます。三重大学でもこのことを実践したいと願っています。

自信を持つことも大切です。その有無がいかに人々の行動や成績を左右しうるかは、数々の実証的研究によって証明されています。「懸命にものごとに取り組むほど、人の意志決定能力は高まる」と信じている人は自らチャレンジングな目標を掲げ続け、優れた課題解決の戦略を駆使して、成果をあげることができます。自信をつけるということは「成功することができる」という信念を持つことだと思います。そして、学問はもとより、クラブ活動にも積極的に取り組んでください。

われわれはこれまで地域との連携による独自性溢れる三重大ブランドを数多く作り出してきました。地域を重視することは地域に閉じこもることではありませんし、地域と共同して成果を上げること、そのこと自身が世界に情報を発信することになるでしょう。地域や日本では当たり前のことであっても、他の国では極めて新鮮であり、社会基盤の整備につながることも少なくありません。そのために、われわれの活動の場は広く世界に求めてください。皆さんが積極的に海外に出かけることを大学は応援します。

三重大学は素晴らしい自然環境に包まれています。伊勢湾に輝く波の翠、鈴鹿、布引山脈や学内に息づく樹樹の翠、白い雲をたなびかせる澄み切った空の翠、3つの翠、三翠が三重大学の未来を指し示しています。そのため、「世界一の環境先進大学」を目指すことを目標に掲げ、教職員、学生が一体となって環境整備に努めています。エネルギーマネジメントシステムの確立やCO2削減に向けての取り組みがスタートしています。環境・情報科学館や新しく改修された附属図書館、共通教育校舎は学生の皆さんの学習環境を著しく向上させました。みんなで議論しながら学ぶこと、一人で文献をひもとくこと、それぞれの状況に応じた学びを通して、三重大学の教育目標である、考える力、感じる力、コミュニケーション力を養い、生きる力を身につけてください。まさに、ラーニングコモンズの実現です。

新入生の皆さん、三重大学の佳き伝統である教職員、学生の一体感をこれまで以上に強め、生き生きとして元気で明るい三重大学を作りましょう。三重大学や三重という地域を良くしようとの意識を持って欲しいと願っています。その気持ちで着実に一歩一歩前に進むことができれば、素晴らしい地域圏大学として評価されるでしょう。われわれの明るい未来のために、みんなで手を組んで、三重大学をこれまで以上に社会から期待される大学として伸びましょう。