- 学長通信 -

三重大学長ブログです。

大学祭と学生気質―最新事情

 11月は大学祭の季節です。学生はその準備に大わらわ、参加者はワクワクどきどきの期待が一杯です。東日本大震災の被災地でもお祭りが出来た所ほど復興が進んでいるとの報道がなされています。私自身も大学生の6年間は阿波踊りを踊り続けました。ほとんどの大学連の踊る阿呆はわれを忘れてお囃子の中で陶酔の境地にありますので、桟敷席の見る阿呆にとっては見苦しいかぎりかもしれません。そして、この時ほど阿波女が美しく見えるときはありません。踊りに熱中して輝いているのが一番の要素ですが、「夜目、遠目、傘の内」が加わるのですから余計にです。「讃岐男に阿波女」と古くから言われているのは、男も女も外観は決して良くはないが、実に働き者であることを意味しています。そういえば妻を筆頭にわたしの周りの阿波女は典型例のようです。

 「祭り」とは「祀る」に由来するため、本来は神様を祀ることのようです。わが国では古くから祭祀と政治を司るものが同じである祭政一致が長く続いたため、政治のことを「まつりごと」と表現することがあります。三重大学祭の祭祀は実態はありませんが三重大学への愛校心であって欲しいと願っています。

 10月中旬に、三重大学の大学祭実行委員の学生達約50人と学務部の企画で懇談しました。学長や副学長の激励の意味も含まれていました。その大半は学部の3年生と2年生です。今年が62回の大学祭であるから、創立以来連綿と続いていることになります。素晴らしいことです。先輩から後輩へ受け継がれた伝統の重みを感じ、それを支えてきた皆さんの努力に心より敬意を表します。

 大学祭も年々洗練されてきているように感じます。企画は現代風となり、近隣の小、中、高校生が多く参加してくれているのは嬉しいかぎりです。模擬店は国際色豊かで、ベトナム、タイ、中国、韓国料理なども楽しむことができます。食感や味もなかなかのものです。ただ、脂肪と砂糖にまみれた食べ物は私ら中年以降にとっては危険が一杯ですが、催し物などの洗練度も高く、大いに楽しめます。

 実行委員会の学生諸君が部門毎に今回の目玉やこれまでの苦労話を懇親会で披露してくれました。ほとんどの学生が上手に纏めて、わかりやすく説明してくれました。寄附集めや各種コンテストの参加者募集に苦労しているようですが、学生が自ら行動し、それを多くの人の前で堂々と発表出来ることに頼もしく思いました。何かあると直ぐに「今の若者は、学生は」と非難しがちですが、これは古今東西変わらない古い世代の若者への「やっかみ」の言葉であることが多いようです。三重大学の学生の多くが実に逞しく成長しているのが実感です。彼らの話の中で、多くの学生が大学や学長の支援に対して感謝していること、また、迷惑をかけて申し訳ないとその気の使いようたるや人生経験豊かな社会人顔負けです。一昨年は大学祭期間中の飲酒に対する近隣よりの苦情、急性アルコール中毒により病院に搬送された学生がいたことなどのため昨年、今年と禁酒の大会にするとのことでした。彼らの気持ちには嬉しいかぎりで、これほど成長している三重大学生を誇りにも思っています。

 しかし、何となく心に引っかかるものもあります。若者の特権である無謀さ元気良さや学生の持っているモラトリアム体質がみえてきません。規制の枠の中で動いているのか、動かされているのか。大学祭で元気いっぱい活動して、予期せぬ結果として、大学や近隣の皆さんに迷惑がかかったとしても、その後に皆で謝りに行けばよい。誠意を持って謝罪すれば理解はえられる筈です。それが若者の爽やかさでしょうか。

 学生時代ほろ苦い経験を思い出します。病院実習で地方の病院に友人数名で出かけました。友人の一人が送別会で泥酔して帰る家を間違えて、見知らぬ家に入り込んで寝込んでしまいました。翌早朝に家人に「窃盗か夜ばい」と間違われて警察に突き出されました。われわれ全員が病院の院長とともに警察署に呼び出されて大目玉をくらいました。田舎では施錠する習慣も少なかった40数年前の出来事ですので、謝罪と説教で済みましたが、現在では不法侵入で逮捕でしょうか。

 某私立大学では、金曜日の17時から構内のある場所で大学酒場が開かれているとのことです。教員間、教員学生間、学生間の交流の場としてほしいとのことで始め、予想以上に好評だそうです。付け加えてその場で学生にはしかるべき教員が酒の飲み方を伝授するとのことです。三重大学も酒造会社と協力して教育の一環として日本酒や梅酒を醸造しています。それが好評で三重大ブランド品として市場に出しています。しかし、飲み方の講習会までは開いていません。開くのも大学の社会的責任でしょうか。しかし、私を含めて飲み方を知らない教職員も少なくないため、誰がコーチ役を勤めるか。それが大問題です。我こそはと思う人申し出てください。

 「酒は飲むべし、飲まるるべからず」「適度の酒は百薬の長、深酒は百毒の長」です。